血中ビタミンD濃度と妊娠率

血中ビタミンD濃度と妊娠率

医局カンファレンスです。

ビタミンDと体外受精の関係についての論文を紹介したいと思います。
(Fertility and Sterility vol,101,No2,2014,447-452)
(Human Reproduction Vol,33,1,2018,65-80)

ドナーから提供された卵子を用いて受精させ新鮮胚移殖した結果、レシピエント(移植した側)の血中ビタミンD濃度によって妊娠率の違いがあるかを検討しました。
2006年から2009年にかけて99人のレシピエントで検討したものです。
 ① ビタミンD十分群(30ng/ml以上)
 ② ビタミンD不十分群(20-30ng/ml)
 ③ ビタミンD不足群(20ng/ml未満) としました。
患者背景で有意差はありませんでした。
(ただし、アジア人とアフリカ系アメリカ人はビタミンD不足群の割合が高い結果となっていました。)

臨床妊娠率(胎嚢確認)、生産率では、①が③より有意に高い結果となっていました。
②と③の間では臨床妊娠率、生産率に有意差は認められませんでした。

また、ビタミンDと体外受精の関係についてのメタアナリシスでは、生産率、妊娠判定陽性率、臨床的妊娠率では②や③と比較して①で高い結果となっていました。(①が②③よりオッズ比がそれぞれ、1.33倍、1.34倍、1.46倍でした)
ただし、流産との関係はみられませんでした。

(解説)
ビタミンDはカルシウムや骨の代謝に不可欠なビタミンとして有名でしたが、最近では免疫作用の調整、癌、アレルギーなどとの関連が言われています。また、妊娠との関連も指摘され、卵胞発育、着床、胎盤形成に関係しており、妊娠高血圧症候群との関連も指摘されています。

論文では、ドナーの卵を患者に使うことで、母体側の血中ビタミンD濃度の影響をどれだけうけるかについて検討し、ビタミンDが不足すると妊娠率が低下することがわかりました。また多くの論文をまとめて検討したメタアナリシスでは血中ビタミンD濃度が高いほうが妊娠率が高い結果となっていました。

なお最近報告された日本人でのデータで、ビタミンDが十分レベルにあるのは9.1%にとどまることが示されており、日本人のビタミンD不足もしくは欠乏レベルにあることが推察されます。

当院でも、なかなか着床に至らない方に検査を勧めています。
そうでない方でも興味がある方や希望される方は是非検査してみてください。