血液中の銅・亜鉛濃度と不妊の関係

血液中の銅・亜鉛濃度と不妊の関係

医局カンファレンスです。

当院にて反復着床不全や原因不明不妊の方に対し、血液中の銅・亜鉛濃度を測る検査を行っています。
今回は、この意味について書きたいと思います。

銅・亜鉛は必須微量元素の一つです。銅の役割は、エネルギー生成や鉄代謝、神経伝達物質の産生、活性酸素除去などに関与しています。亜鉛は300種類以上の酵素の活性化に必要な成分で、細胞分裂や核酸代謝などにも重要な役割を果たしています。
現代人では銅の摂取量は増え、亜鉛の摂取量が減少していることが厚生労働省の統計から報告されています。

では、銅と亜鉛がなぜ不妊と関係しているのか?もともとWilson病(銅が各臓器に過剰に蓄積される常染色体劣性遺伝疾患)の女性は妊娠しにくく、流産しやすいといわれています。
これは、肝機能障害による2次性ステロイドホルモンの代謝異常や脳への銅の蓄積による中枢性の月経異常、さらに子宮内膜に銅が付着することによるものと考えられています。
このことを裏付けることとして、子宮内避妊具に銅を添加したものがあり、これは避妊効果が高いことが言われており、同様の作用により不妊に至ることが言えます。

次に亜鉛についてですが、亜鉛が欠乏すると、特に男性の性腺発達障害や機能不全が生じると言われています。
具体的には、テストステロンの合成・分泌低下、さらに精液中の亜鉛濃度が低いと精子形成が低下します。
また、女性にとっては受精卵の分割を促したり、子宮内の環境を整える作用があると言われています。

では、銅と亜鉛がどのように関係しているのか?銅と亜鉛は吸収経路がほぼ同じで、十二指腸、小腸で吸収されます。そして、腸内の濃度が高いほうがより吸収されます。銅は通常の食品において過剰摂取が生じることはありません。
亜鉛摂取が少なくなっていることが問題なのです。
亜鉛を摂取するようにすると、腸内の亜鉛濃度↑⇒血中亜鉛濃度↑⇒血中銅濃度↓となります。妊娠しやすい(着床しやすい)状態にするには、亜鉛摂取を増やしていくことで亜鉛の吸収を高め、銅濃度が上昇し過ぎないように押さえてあげることが重要です。

亜鉛は肉、魚、チーズ、ココア、抹茶に多く含まれています。亜鉛の吸収を阻害するものとして、穀類、豆類に多く含まれるフィチン酸や食物繊維の過剰摂取、食品添加物があります。
フィチン酸は未精製の穀物(玄米の胚芽や表皮)、小麦、豆類(ゴマ、大豆、ピーナッツ、インゲン豆、とうもろこし)です。精製後の穀物にも少量含まれていますが、炊飯することで多くが分解されます。あくまでも過剰摂取がいけないことであり、上記の食べ物は日常的に取り入れているものも多いので極端な摂取制限はやめましょう。

気になる方は一度採血してみてください。

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