子宮筋腫と体外受精での着床率、妊娠率、流産率の関係

子宮筋腫と体外受精での着床率、妊娠率、流産率の関係

医局カンファレンスです。

子宮筋腫について興味深い論文が出ていたので紹介します。(Fertility and Sterility Vol.109,No5,May 2018 817-822)

子宮筋腫は発生する部位から大きく分けて、粘膜下筋腫、筋層内筋腫、漿膜下筋腫があります。
粘膜下筋腫は着床、流産に関係していることが言われています。

この論文で検討した筋腫は子宮内腔に突出しているような筋腫ではないが、子宮内膜に接して存在しているタイプの筋腫(タイプ3)であり、我々も手術をしたほうがいいのか迷う位置にあるものです。この筋腫が体外受精での着床率、妊娠率、流産率等に関係しているのかを検討した論文です。

2009年から2016年まで体外受精を行い、タイプ3の筋腫がある151名とコントロール群として筋腫がない453名で検討しています。タイプ3の筋腫は2.85cm未満の大きさで検討しています。(なぜかというと、以前の検討で2.85cm以上になると生産率が低くなるという結果が出ていたためです。)
患者背景(年齢、BMI、FSH、不妊原因)に差はありませんでした。
また刺激方法(ロング法、ショート法)、HMG量、採卵数、良好胚数に有意差はありませんでした。
臨床妊娠率、着床率、生産率でタイプ3の筋腫のあるグループが有意に低い結果になっていました。
また、直径の合計が2cmをこえると着床率、妊娠率、生産率が明らかに低下する結果にもなっていました。

(解説)
タイプ3の筋腫の診断は子宮鏡と腟超音波を使って行います。
子宮鏡でみると内膜に突出はないが、超音波では内腔に突出しているようにみえる(内膜のゆがみ)位置にある筋腫です。内膜にゆがみが少ない位置にある筋腫なので、どうすべきか悩むタイプの筋腫です。

なぜかというと摘出するには開腹手術が必要となり、また子宮内腔に到達してしまうような手術になり、子宮破裂や子宮内腔の癒着のリスクも高くなるからです。

しかし、筋腫があると、子宮のゆがみ、血流異常、子宮内膜の面積増大、異常な子宮収縮や蠕動運動による精子や胚の輸送障害があり、不妊や不育症の原因になることがあります。
さらに最近は筋腫の存在によって発現遺伝子の異常も指摘されています。BMP2は着床に必要なタンパクですが、筋腫からは多くのTGFβが産生され、そのTGFβがBMPの産生を抑制することがわかり、着床しにくくなる原因ではないかと言われています。

今回の論文を読んで、なかなか着床に至らなければ、リスクもありますが摘出について考慮していくべきと思われました。
ただ、今回の論文では摘出後に妊娠率が改善したという結果まで至っていません。
今後の検討結果を待ちたいと思います。