iPS細胞の培養方法

iPS細胞の培養方法

こんにちは。培養士の川瀬です。
以前から挑戦したかったiPS細胞の培養方法を習得するため、講習会を受けてきました。

普段私は患者さまからお預かりしている胚のお世話をしていますが、iPS細胞の培養方法も生殖細胞の培養方法と共通する点があり、興奮しきりの非常に興味深い講習会でした。
なかでも驚いたことは、iPS細胞の凍結方法です。
一般的な培養細胞は「緩慢法」と呼ばれる方法で凍結を行いますが、iPS細胞は「ガラス化法」と呼ばれる方法で凍結されます。実は胚を凍結する際にも「ガラス化法」が利用されています。

なぜ、一見全く違う細胞であるiPS細胞と胚の凍結方法が同じなのでしょうか。

iPS細胞の培養方法は2種類あり、一つはフィーダー細胞の上で培養したiPS細胞(オンフィーダー)、もう一つはフィーダー細胞を使わずにiPS細胞だけを培養する方法(フィーダーフリー)です。
フィーダー細胞とはiPS細胞が増殖する際に足場となる細胞のことです。

ガラス化法で凍結を行うiPS細胞は、オンフィーダーの細胞に限られます。
オンフィーダーのiPS細胞の特徴は、ある程度の細胞集団(コロニー)を維持した状態でのみ生きられる、ということです。
従って、凍結する時もiPS細胞のコロニーをひとつの組織として考え、凍結する必要があります。
つまり、オンフィーダーのiPS細胞も受精卵と同様に未分化な状態である一つの組織として考え、同じガラス化法を用いて凍結しているのです。

一方、フィーダーフリーで培養するiPS細胞は一つ一つの細胞をバラバラにしてから培養し、再びコロニーを形成させます。凍結する際も細胞をバラバラにして凍結します。
従って、フィーダーフリーのiPS細胞はガラス化法ではなく、緩慢法で凍結します。
実は精子の凍結方法は緩慢法で行います。

まとめると、卵子や胚のように一つの組織になっているiPS細胞はガラス化法で凍結し、精子のように、細胞がバラバラの状態であるiPS細胞は緩慢法で凍結するのです。
iPS細胞はどのような組織にも分化しうる能力を持っています。
その能力は受精卵である胚盤胞と同程度だと考えられているそうです。

排卵誘発を行っても卵子が採取できないかたや無精子症のかたも、将来、iPS細胞から自分のDNAを持つ卵子や精子を再生することが可能になるかもしれません。