検査部の鈴木です。
季節が変わるのは早いもので、桜が咲いたと思ったらもう梅雨の季節です。
梅雨のジメジメした暑い日には、よく冷えた炭酸飲料に手が伸びます。
そこでふと思ったのですが、この炭酸飲料は不妊治療に影響があるのでしょうか?
今回紹介する論文は、不妊治療の専門雑誌Fertility and Sterilityに発表された飲み物と体外受精 (In Vitro Fertilization, IVF) の成績の関係を調べた論文(1)で、まさにこの疑問に答えてくれます。
カフェインとIVF
カフェインの摂取と妊娠の間に関係があると以前から考えられており、当ブログでも2012年10月に田口先生が
習慣的にカフェインを摂取していたが今は止めている人は妊娠率が高い
という論文を紹介しています。
今回紹介する論文でもお茶を一日1杯以上飲んでいるグループでは、採卵数、成熟卵数、受精率が有意に低下していました。
ただしカフェインと妊孕性の関係にはまだ議論があるところで、この論文の結果ではカフェインを含むコーヒーやお茶を摂取しても妊娠率と生産率には有意な差は見られませんでした。
砂糖入りはIVFに悪影響
しかし、一日に一杯以上の砂糖入り炭酸飲料を飲んでいるグループでは体外受精の成績が有意に低下していました。具体的には、採卵数が1.1(10.6%)、成熟卵数が1.2(14.8%)、受精率が0.6(10.3%)、優良胚の割合が0.6(23.0%)減っていました。さらに臨床妊娠率は砂糖入りを飲んでいないグループの57%、生産率は43%と大きく低下していました。
同じ炭酸飲料であっても砂糖が入っていないダイエット炭酸飲料では、採卵数などIVFに影響は見られませんでした。
よってこの影響は砂糖による影響だと考えられます。
このことは、一般的に砂糖や果糖を多く含むエナジードリンクでも砂糖入りの炭酸飲料と同じ傾向が見られたことと矛盾しません。
私自身は、ダイエット飲料の方がより悪影響があるのではないかと想像していたので、この結果に驚きました。
本当に砂糖が原因?
では体外受精にトライしている方は、今日から砂糖入りの炭酸飲料を飲むのは止めるべきなのでしょうか?
砂糖入り炭酸飲料を飲んでいるグループには、少し飲みすぎではという一日10杯も飲んでいる方が含まれています。
そのためBMIの差は考慮しているとしても、砂糖入り炭酸飲料を飲むグループと今回調べていない何かの因子に擬似相関があり、その結果として砂糖との関連が見えているだけの可能性を否定できません。
だとしてもWHOが一日に摂取する砂糖の量は摂取カロリーの5%、2000kcalならば砂糖25gというガイドラインを出していますので、不妊治療を受けている・いないに関わらず、コップ一杯で20g近い砂糖を摂取する炭酸飲料はできるだけ飲まない方が良さそうです。
体外受精によい飲み物
では反対にIVFの成績を良くする飲み物は無いのでしょうか?
今回の論文の中で唯一IVFの成績が良くなったグループは、ハーブ茶を飲んでいたグループです。
ハーブ茶を飲んでいるグループでは、採卵数が1.9(19.6%)、成熟卵が1.2(15.8%)、受精卵が0.7(13.0%)上昇していました。ただし残念ながら妊娠率と生産率に有意な差は見られませんでした。
ハーブ茶にはたくさんの種類があり、それぞれ別の効能がうたわれています。
しかしこの論文では、それらをまとめて「ハーブ茶」としてしまっています。
そこでここを詳しく調べることで、妊娠率などを含めて体外受精の成績をさらに向上させるハーブ茶が見つかるのではないかと期待します。
今回紹介した論文
1. Machtinger R, Gaskins AJ, Mansur A, Adir M, Racowsky C, Baccarelli AA, et al. Association between preconception maternal beverage intake and in vitro fertilization outcomes.
Fertil Steril [Internet] 2017;108(6):1026–33. Available from:
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29202972