受精卵の空胞形成

受精卵の空胞形成

医局カンファレンスです。

今回は受精卵の空胞形成についての論文を紹介します。
(Fertility and Sterility Vol.109,No.6,2018,p1025-1029)

今回の論文は、受精後4日目の桑実胚の時期の空胞形成がその後の胚盤胞にどのように影響を与えているかについてです。

2016-2017年にかけて424人の体外受精患者を対象に、

 グループ1(G1):すべての桑実胚で空胞形成あり
 グループ2(G2):空胞形成なし
 グループ3(G3):一部に空胞あり

に分けて検討しています。

G1ではG2、G3と比較して、胚盤胞形成率および良好胚盤胞率が低くなっていました。
さらに妊娠率、生産率についても有意に低い結果でした。移植胚数(平均1.15個)、胚盤胞のグレード、子宮内膜厚において差はありませんでした。ただし、G3では空胞がなかったものを移植しています。

(解説)
空胞は受精後の胚ではどの段階でも発生し、よく見られるものです。
その大きさ、数が胚の質を評価する一つの基準になります。
この論文では、発生時期に焦点をあてて検討しています。
空胞というのは、水様の液体で満たされた球形をしており、細胞膜で囲まれた細胞内封入体です。
通常、空胞は顕微授精によって生み出されるものではありますが、発育段階のどの段階でも自然に発生します。

また、4日目で空胞が確認できることが一番多く(11%)、これがアポトーシスや発育停止を意味するかどうかはまだはっきりと証明されていません。このような結果になった理由として、4日目に空胞が認められると、細胞質の量が減少し、それが胚盤胞における細胞の損失につながり、良いグレードの胚盤胞になれないことで妊娠率が低下したと考えられます。

すべての胚で空胞が形成されることはあまりありません。
G3のような一部の胚にみられることはよくあります。

今回の結果から言えることは空胞の無いものを移植して良好な妊娠率が出ており、混在していても空胞のない胚に影響を与えていないことと空胞のないものを優先的に移植していくほうがいいということです。
しかし、大きな空胞形成があっても正常児はみられるという報告もあり、空胞形成があるからといって凍結に値しないというわけではありません。