医局カンファレンスです。
今回はアシステッドハッチング(AH)によって先天的な異常が起こるかについて、日本におけるデータがありましたので紹介します。(Fertility and Sterility 2015;104:71-78)
日本産婦人科学会が集計したデータをもとに検討しています(2010年から2012年)。
72125周期中35488周期でAHを行っています(49.2%)。
全体での先天性異常は1046例(1.4%)、その中でAH例1.36%、non-AHA例1.5%でした。
AHと先天性異常の関係は認められませんでした。
新鮮胚移植でのIVFとICSI、融解胚移植の初期胚と胚盤胞でのAHと先天異常との関係もみとめられませんでした。
また、多胎については、non-AHA例(1.31%)よりもAHA例(1.52%)のほうが有意に高くなっていました。
その他判明したことは、AH例はnon-AHA例よりも出生児体重が有意に重い(AH:3019g、non-AHA:2979g)ことがわかりました。
(解説)
AHとは、透明帯を希薄化させて移植胚の孵化を補助するものであります。
適応は
① 凍結融解胚移植を行う際に、凍結による透明帯の硬化によるハッチング障害を防ぐため
② 良好胚を移植しても妊娠に至らない場合
③ 高齢症例 です。
いずれも、透明帯の硬化により孵化ができない状態が考えられる可能性があるときに適応されます。
今回は後ろ向きコホート研究ではありますが、日本における膨大なデータを用いて検討しています。
先天性異常において、IVF、ICSI、新鮮胚移植、融解胚移植(初期胚と胚盤胞)とAHの間に相関関係はみとめられませんでした。今回は検討されていませんでしたが、初期流産に関してはRCTのメタアナリシスでは関係はないとでています。
またそのRCTでは多胎のリスクも今回と同様に上昇するとでています。
しかし、一卵性双胎の発生に関与しているかははっきりわかっていません。むしろ、胚盤胞移植自体が一卵性双胎に関与していることが考えられます。
AHが生産率の向上にむすびつくかはまだはっきりしていませんが、AH自体によって先天性異常がひきおこされることは否定的なことがわかりました。
着床補助技術に関しては、行うことで少しでも妊娠率向上に役立てればいいのですが、それによって不利益がおこってしまうことが一番いけないことだと思っています。
この結果から双胎になる可能性が上昇することが否定できませんが、胚自体に異常がでることはないことがわかりました。
この結果から、AHを希望される方に大丈夫ですよと伝えることができると思いました。