チョコレート嚢胞とAMH値について

チョコレート嚢胞とAMH値について

医局カンファレンスです。

今回はチョコレート嚢胞とAMH値についての論文を紹介します。
(Fertil Steril 2019;111:944)

18歳から42歳までの手術予定の方で、チョコレート嚢胞群148名とその他の卵巣嚢腫(コントロール群)119名について手術前のAMH値を検査し、嚢胞の大きさとAMH値について検討しています。

年齢ではコントロール群が若く、BMIもコントロール群は高い傾向にありました。また両側に嚢胞があるかの有無についてはチョコレート嚢胞群が有意に多かったです。

しかし、AMH値はチョコレート嚢胞群が3.8ng/ml、コントロール群が4.1 ng/mlと有意差はありませんでした。そして、コントロール群では嚢腫の大きさとAMH値に相関はありませんが、チョコレート嚢胞群では、嚢胞が大きくなればなるほどAMH値が高いことわかりました。

(解説)
チョコレート嚢胞(子宮内膜症)は生殖年齢の方の約7-10%に認められます。大きさはさまざまですが、外来でもチョコレート嚢胞を認める患者さんは多くいらっしゃいます。チョコレート嚢胞は良性のものが多いのですが、約0.7%に癌化が認められるといわれています。
したがって、約5-6cm以上の大きさのものになってくるとマーカーやMRIなどで精査しつつ、必要ならば手術を勧めていきます。しかし、手術後に卵巣機能の低下が認められることが多く、挙児希望の患者さんには手術するかどうかを慎重に見極める必要があります。

またAMH(アンチミュラー管ホルモン)とは、卵子が原始卵胞→一次卵胞→二次卵胞→前胞状卵胞→胞状卵胞と約5-6ヶ月かけて成長してくるなかで、一次卵胞から前胞状卵胞の間、成長途中の卵胞から分泌されるホルモンです。

今回の論文で驚いたのは、チョコレート嚢胞径が大きいほうがAMH値が高いという点です。この理由については、チョコレート嚢胞によって嚢胞周囲に炎症や血管新生がおこり、卵巣の血流が良くなることで卵子の供給が多くなるからではないかと書かれてありました。
これはつまり、早くに卵子がなくなってしまう可能性を示唆しています。

チョコレート嚢胞がある方はAMH値が比較的高い状態でも卵子が早くなくなってしまう可能性があり、AMH値が高いから安心とはいえないことを伝えていかなければと思いました。