PGS(着床前診断)でのモザイク胚の妊娠率や着床率について

PGS(着床前診断)でのモザイク胚の妊娠率や着床率について

医局カンファレンスです。

今回はPGS(着床前診断)でのモザイク胚の妊娠率や着床率についての論文を紹介します。

NGS法にて行っています。
妊娠継続率は、1染色体異常のモザイク胚50%、2染色体異常のモザイク胚45%、部分的なモザイク胚41%、複合型のモザイク胚10%、となっていました。

複合型は他のモザイク胚と比較し、有意に継続妊娠率が低かったです。また、40-80%に異常があるモザイク胚は40%未満のモザイク胚に比べて継続妊娠率が有意に低い結果でした(22% vs 56%)。

また、モノソミーとトリソミーモザイク、染色体全体と一部のモザイクでは妊娠率に有意差はありませんでした。

正常胚との比較では、着床率(正常胚 vs モザイク胚:70%vs53%)、流産率(10% vs 25%)、妊娠継続率(63% vs 40%)となっており、いずれも有意差がでていました。

(解説)
モザイク胚はPGSを行ない始めて以来どうするか議論の対象になっています。
女性の年齢と共に多くなってくる減数分裂の際に起こる数的異常(ノモソミーやトリソミー)とは違い、モザイクは年齢に関係なく起こってきます。
初期胚では30%ほどがモザイクですが、胚盤胞に成長するにしたがってモザイク確率は低下していきます。

PGDIS(Preimplantation Genetic International society)のガイドラインでは、異常が20%未満を正常数体、20-80%をモザイク、80%以上を異常体としています。高解像度NGS法を用いると約10-20%がモザイクとなります。
従来法では胚の正倍数体と異数体に分類するだけであったため、知らないうちにモザイク胚を移植してきたため、着床率がおもったように上がらなかったり、流産率が高かったりしていました。
モザイク胚が検出されるようになり、さらに異常40%未満であれば妊娠継続率が50%得られることがわかってきたため、移植胚の順序は最後の方になりますが、残しておく意味があると考えられます。