医師の船曳美也子です。
令和元年も終わりに近づきました。令和になっても少子化は進んでいるようです。https://this.kiji.is/576971410122179681
少子化に対して金銭的解決しかないという提案もしばしば耳にします。これは、結婚しているご夫婦に対しては有効かもしれません。
ですが、産婦人科の目からみると、真の少子化の原因は、晩婚化にともなう晩産化であると考えます。出会いの場をひろげるとか、経済的インセンティブをつけるとか、早婚へむけてのきっかけ作りも必要とは思いますが、知的成熟社会で身に着けないといけない技術や知識の量がふえている今、こどもはいずれほしいけれど、今現在は産めないという女性は多いと思います。
そして、産むことを考える時期が遅くなると、生殖的に妊娠しにくくなってしまう生殖年齢の壁が一番の少子化の原因だと思います。
http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa20.html (生殖医学会HPより)
そこで、生殖医療専門医としての技術的解決策は 卵子凍結です。日本では、2013年の生殖医学会のガイドラインより医学的適応でない、社会的卵子凍結も認められています。
がん治療で卵子が激減する可能性に備えてする卵子凍結を医学的適応といいます。海外では、がん治療だけでなく、早発閉経といって30代で閉経してしまうリスクの方や、子宮内膜症などで卵子の予備力がさがっている人も医学的適応になっていたりします。医学的適応か社会的適応か、この線引きは国によっても様々です。この論文では、ヨーロッパ各国での卵子凍結、卵巣凍結の事情をまとめています。
Human Reproduction Open,pp.1-9,2017
Oocyte and ovarian tissue cryopreservation in European countries:statutory background,practice, storage and use/ The Eshre woreking group on Oocyte Cryopreservaion in Europe
この論文によると、最も多かった卵子凍結適応は 卵子提供用59.9%、がん治療前10.9%、他の医学的理由(早発閉経、内膜症など)16.1%、医学的理由でないもの(いわゆる社会的理由)13.1%でした。ここで、医学的理由をどこまで認めるかが問題になっていました。というのは、国によっては医学的理由の凍結は金銭的補助があるからです。例えば、卵巣腫瘍が良性であっても手術時切除の範囲が広いと卵子は減ります。こういった卵巣機能低下を医学的と認めるかどうかがケースにより異っているようです。
また、国による規制や制限年齢も様々でした。社会的適応の卵子凍結はオーストリアでは認められていませんが、ドイツは49歳までOK。フィンランド、スペインやイタリアは年齢制限特になくOKとなっています。フランスでは2015年まで禁止されていました。が、陸続きのスペインやイタリアで治療を受ける人がいるので、2016年より一部認められているようです。
このように、各国の組織により、考え方は異なります。現在日本の生殖医学会の社会的卵子凍結の指針は2013年は40歳未満推奨、2018年は36歳未満推奨と変更されています。少しでも妊娠率が高い時期の卵子凍結は望ましいので、指針変更は有効と思いますが、反対に、当院では40歳以上でも凍結卵子からの出産された方がいらっしゃるので、しっかり情報を集めていただければと思います。
当院でも卵子凍結セミナーは隔月に行っています。
住吉 https://www.oakclinic-group.com/info/info39.html
銀座 https://www.oakclinic-group.com/info/info60.html