医師の田口早桐です。
Luteal phase after conventional stimulation in the same ovarian cycle might improve the management of poor responder patients fulfilling the Bologna criteria: a case series
Fertility & Sterility 2020年1月号からの論文紹介です。
卵巣機能が低下して刺激への反応が悪くなっている例では、連日注射をして採卵するよりも、クロミッドなどの低刺激で採卵を行うことが多いと思います。
この論文では、普通に大目の量、450単位で連日刺激をして採卵、採卵後数日後から、再度刺激を開始して育ってきたものを採卵、という、「一粒で2度美味しい」(ご存知でない世代の方も多いと思いますが、グリコアーモンドキャラメルのコピーです)採卵方法を試しています。
黄体期から排卵誘発を始めるのは、今では当たり前の方法で、ランダムスタートと呼んでいます。
今回の論文では、
①同じ周期での1回目の採卵を2回目の採卵の比較(採卵数、染色体正常卵の数、生産率)
②採卵と同周期でなく、1~2ヶ月あけてから2回目の採卵をした場合(これが通常なされている形と思います)
との比較(1個以上染色体正常胚が確保できた割合、少なくとも一人生まれた割合)を行っています。
染色体を調べているので、着床前スクリーニングをしているわけですから、胚は全て凍結して、別周期で移植しています。
100人について1周期に2回採卵して比較した結果、発育卵胞数も、染色体正常卵の数も2回目の採卵のほうが多く、特に、生産率(生まれた数)は、1回目の採卵から得られた卵では7%、2回目の採卵から得られた卵では15%だったということです。
通常通り1~2ヶ月あけてから2回目の採卵をしたケースと、2回目採卵同士で比べても、生産率は同周期15%と別周期8%で、同周期に採卵した方がよかったという結果でした。
つまり、①採卵後に間髪いれずに刺激しても、むしろ多くの、そして良い卵子が取れる⇒とくに卵巣を休ませなくてもよい、②AMHが低くても刺激をしてよい、ということです。
当院でも、年齢や、医学的理由など採卵を急ぐ例では、ランダムスタートや連続刺激周期を行っており、その数はどんどん増えています。と同時に、とくに採卵数が減るわけでも、質が悪くなるわけでもないことを経験しています。実際、いつも1~2個しか取れない人が、同周期採卵をしたら、13個採卵できて驚いたこともあります。ただし、これからさらに検討を重ねていく必要がありますね。