医局カンファレンスです。
排卵を促すHCG注射について、学会発表されたデータと共にどのような意味があるのかを書きたいと思います。
(2002年アメリカでのデータです)
人工授精(IUI)するのに一番いいタイミングは?という演題です。
全員月経5日目からクロミッドを2錠分2で5日間内服してもらっています。自然にLHサージがでるのを待って、LHサージの翌日にIUIするのがいいのか、20mm以上でHCG投与し翌日IUIがいいのかについての前方視ランダム比較試験です。
患者背景は同等で、運動精子が400万以上としています。79名、167サイクルで19人が妊娠しました(約24%)。それぞれ、LHサージ群86サイクル中6サイクル(40人中4人:10%)、HCG投与群/81サイクル中13サイクル(39人中10人:25%)、数が少ないため有意差はなかったものの、HCG投与群のほうが妊娠率は高い傾向にありました。
キャンセル率はLHサージ群が高かったです。妊娠率が高い傾向にあった理由としては、キャンセル率が低いことと卵子の成熟、黄体機能、着床に有利な内膜の変化によるものではと考察されています。
HCG注射は一般不妊治療では、タイミングを合わせやすくするためと黄体ホルモン分泌を促すために用います。体外受精の採卵時の目的は卵子の成熟化と卵丘細胞と顆粒膜細胞の解離を促す目的があります。
排卵を促すホルモンはLH(黄体化ホルモン)ですが、HCGはLHと同じ生物活性があるため排卵を促す作用があるために用いられてきました。
半減期は約30時間であるため、投与後しばらくは体に残ります。HCGはエストロゲンやプロゲステロンといった妊娠に必要なホルモンの分泌を促し、着床しやすくする作用があります。
黄体ホルモンにはない、エストロゲンの分泌も促す作用があるため、黄体ホルモン補充のみよりはより着床しやすいホルモン状態を確保できます。
HCGは注射のため患者さんにとっては苦痛が多少なりともあるため、注射が苦手な方には自費にはなりますがLHサージを促すGnRHアゴニストや排卵後に黄体ホルモン補充をしていくことでも対応できます。
なかなか日々の診療で一つ一つの治療の深い意味合いについて話をすることが難しいため、今回はHCG注射投与について書いてみました。私達が当たり前になっていることでも患者さんにとっては疑問に思われることは多々あると思います。気軽に聞いてみてくださいね。