医師の田口早桐です。
Tubal factor infertility with prior ectopic pregnancy: a double whammy? A retrospective cohort study of 2,892 women
Fertility Sterility 5月号より
子宮外妊娠のリスクは全妊娠の1~2%、体外受精の場合は少し高くて、2~5%と言われています。
卵管で受精した受精卵は卵管の中の繊毛(とても細い毛)が動くことによって卵管から子宮に運ばれますが、卵管の働きが悪いと受精卵の移動がうまくいかず、卵管の中で止まってしまい、そこで着床してしまう、それが卵管妊娠です。子宮内膜がないところに着床するくらいなので、受精卵はとても元気だということもできます。
子宮外妊娠のほとんどは卵管妊娠で、体外受精を受けることになる主要な原因の一つに卵管因子がありますから、それが体外受精の際に子宮外妊娠の率が少しあがる要因ではないかと推察されます。
子宮外妊娠の治療として、卵管を切除したりすることになるので、その後の自然妊娠の確率が下がりますから、体外受精治療を受けることが多くなりますが、その場合、子宮外妊娠を繰り返す可能性が、子宮外妊娠の既往がない人に比べて高くなるのかどうかを調べた論文です。
後方視的研究で、2892人の女性を、①子宮外妊娠既往、②子宮内妊娠既往(出産、流産、中絶含む)、③妊娠経験なし、の3グループに分けて、体外受精を行った結果の、妊娠率、流産率、生産率、子宮外妊娠の率、を比べています。
結果は、意外なことに上記の4つの率に関して、3グループで差はありませんでした。
子宮外妊娠の率も差がなかったのです(①1.6~0.9% ②0.9~2.2% ③0.8~2.0% :年齢層別に集計しているのをまとめて記載しています)。ただし、①のグループは、②に比べて若く(①29歳②31歳③29歳)、そして移植胚は分割期胚よりも胚盤胞で移植している割合が多かったということです(①は44%、②37%、③34%)。
子宮外妊娠は、既往のない人に比べて繰り返すことが多いという報告も多く、我々もそのような印象を持っていますが、この論文からは、それほど心配しなくてもよさそうです。
ただし、できれば胚盤胞の状態での移植が望ましいかもしれません。分割期移植に比べて胚盤胞移植のほうが、移植から着床までの時間が短いので、子宮外妊娠になりにくいということも言われています。
折角の妊娠が子宮外に着床していると分かった時の落胆と不安はとてつもなく大きいです。
同じことを繰り返さないための工夫が少しでもできるのであれば、取り入れたいですね。