オーク会検査部です。
最近コロナ禍の影響で、他院で凍結した胚や精子を当院に移管して来られる方が増えています。
国際結婚のご夫婦が海外で凍結保管をされていた場合や、海外赴任中の方が何ヶ月かに1回帰国して不妊治療をしていたという場合では、渡航ができなくなった今年の春から不妊治療が止まってしまっており、これ以上待てないということで移管に踏み切られる方が多いようです。
当院ではコロナ禍以前から国内・海外を問わず、引越しに伴う転院のための凍結胚・精子・卵子の輸送を多く取り扱っていましたので、安心してお任せいただけると思います。
ただ、ご夫婦が日本と海外に別居されている場合、移管した胚や精子を使い切ってしまった時点でまた治療が止まってしまうという事態に直面してしまいます。この場合は、卵子と精子をそれぞれ現地で凍結して、凍結卵子がある施設に精子を移管し、受精させて移植するというステップを再び行うことで対応は可能です。しかし、そうすると時間や費用、手間が余分にかかってしまうので、当院では、移管精子については再凍結をご提案させていただいております。
一度融解した凍結精子を再凍結することは、精子クオリティの劣化を懸念して躊躇する方もおられます。確かに、精子洗浄の際の遠心分離によって精子DNAの断片化が起こるという報告もあり、凍結精子は融解する度に凍結保護剤を除去するために洗浄する必要があるので、洗浄のステップが増えた分だけ精子DNAの断片化も増えてしまう可能性は否定できません。ですが、うみわけ目的の精子選別では、より長時間かつ複数回の洗浄を行なうにも関わらず、その精子を用いた顕微授精の受精率や妊娠率が有意に下がるということはありません。なので、精子を再凍結する際に精子クオリティへの悪影響はあまり心配しなくてもよいと考えられます。
凍結・融解を繰り返すごとに回収できる運動精子の数は減ってしまうので、精子所見によっては再凍結に適さないということもあり得ます。採卵日に合わせて精子を採取する、または凍結しておくことができるなら、それに越したことはないのですが、医学的な理由(男性不妊)や、物理的な理由(パートナーが遠方にいる、スケジュールが合わない など)で精子の採取が難しい場合には、精子再凍結は有効な手段です。必要に応じて前向きご検討ください。