医師の船曳美也子です。
11月11日に開催された日本生殖医学会で演題を発表してきました。『レボノルゲストレル放出子宮内システムであるミレーナを子宮内膜症の治療目的で挿入したまま排卵誘発を行った症例』についてです。重い月経痛と過多月経を主訴とした子宮内膜症の方には、月経量が減少し、月経痛も非常に軽くなる子宮内挿入システムです。子宮内膜症で保険適応もある治療ですが、避妊具としての効果もあります。
ミレーナより放出される極少量の黄体ホルモンが、子宮内膜を菲薄化し、頸管粘液を減少させること、またミレーナを着床部位に装着することが避妊効果をもたらします。では、避妊具なのに、妊娠目的の採卵治療ができるのかということが疑問になるかもしれませんが、ミレーナが作用するのは子宮のみで卵胞発育には影響しないとされています。実際、ミレーナを用いたままの採卵は海外で報告があり、そうやって採卵された卵子から赤ちゃんもまれています。主に卵子ドナーや社会的卵子凍結目的での採卵の方で、採卵時は避妊するためにミレーナをいれていた方です。
チョコレート嚢腫を小さくする効果はないのですが、月経痛を軽くするので、内膜症治療を継続しながら採卵をしたい方にはもっと推奨されていい治療だと考えています。
さて、学会ですが、ビデオだとディスカッションできないので、現地参加でなくてもライブで発表できるシステムになっていなかったのは残念でした。内容としては、卵子凍結への助成金制度で凍結した卵子と結婚後の新鮮卵子を受精させた胚で妊娠したという報告がポスター発表されていました。当院でも、2016年ころから増えだした卵子凍結ですが、凍結卵子を使用されるかた、また、そして妊娠されるかたが、徐々に増えてきています。また、まとめて発表する予定です。