オーク会検査部です。
最近、卵子凍結に関するニュースを見聞きすることが増えたように感じます。
当院は以前から、卵子凍結に関して新聞やテレビの取材をお受けすることが多かったこともあり、私自身がその類のニュースに敏感ということもあるのかもしれませんが、最近では、
- 一度は第一線を退いた女性アスリートが卵子凍結をして現役復帰し、オリンピックを目指すというニュース
- 30代後半で卵子凍結をしたライターさんの体験記
- 卵子凍結を実施した女子大生を取材したという記事
など、卵子凍結をする女性の視点で、社会的適応の卵子凍結が取り上げられることが増えたと思います。
実際に卵子凍結をされる患者様も増えています。
当院では2008年から卵子凍結を行っていますが、当時は、医学的適応(癌などの治療で抗がん剤や放射線を使うと卵巣がダメージを受けてしまうので、その前に卵子を採って凍結する)や、採卵当日に精子が得られず受精させることができなかった場合など、やむを得ない症例が対象でした。2013年に日本生殖医学会から未受精卵子等の凍結保存に関するガイドラインが出てからは、未婚の方や、「今は仕事に専念したいけど将来的には子どもがほしい」という方が将来の妊娠に備えて卵子凍結をする、社会的適応の卵子凍結が増えてきて、今では毎月30~40名の患者様が当院で卵子凍結をされます。
また、最近では凍結卵子を使う方も増えてきています。保管期間数年を経て、当時想定した「将来」に到達した方が多数おられるということですね。
凍結卵子を用いた治療について、凍結胚に比べて生存率が劣るとか、妊娠率があまりよくないなどという報告もありますが、当院でのデータを見る限り、融解後の生存率はほぼ100%で、凍結胚と差はありません。融解した卵子全てが移植できる胚になるわけではなく、顕微授精をしても受精しない、受精しても発育しない卵子が一定数あるのですが、それは新鮮卵子でも同様で、その割合は大差ないようです。昨年10月までに凍結卵子を使用した方は140名、妊娠した方は63名で(妊娠率45%)、このうち26名の方は既にご出産されています。
卵子凍結は妊孕性の温存、不妊症の予防的治療としては有効な手段なので(但し、将来の妊娠を保証するものではないということを念頭に置いておく必要はあります)、広く普及すればいいと思います。