こんにちは。検査部の鈴木です。
今回の動画では、6月28日に開催いたしましたOak Journal and Case Reviewより、私が紹介したOak Journal Reviewの内容をお届けします。
紹介した論文は、
Effect of unplanned spontaneous follicular growth and ovulation on pregnancy outcomes in planned artificial frozen embryo transfer cycles: a propensity score matching study.
Su Y, Ji H, Jiang W, Xu L, Lu J, Zhao C, et al. Hum Reprod 2021;36(6):1542–51.
です。
凍結保存しておいた胚は、子宮内膜を着床に適した状態にしてから子宮に戻します。この子宮内膜の状態を整えるには、大きく2つの方法があります。
1つは自然周期と呼ばれる方法です。これは、呼び名の通り超音波で卵巣を観察し、自然に排卵が起こった日を基準に移植日を決定して移植する方法です。もう一つは、ホルモン補充周期です。こちらは生理開始後に卵胞ホルモン(エストロゲン)を服用開始し、子宮内膜が十分に厚くなったところで移植します。どちらも移植後の成績に優劣はありませんが、当院ではキャンセルになることが少ないホルモン補充周期を選択させる方が多いです。
少し横道にそれますが、毎月排卵される卵子の数は、ホルモンの働きによってコントロールされており、大体1個です。
毎月脳下垂体から分泌されるホルモンに反応して、卵巣では複数の卵子の元となる卵胞が大きくなり始めます。このままだと複数の卵子が排卵されてしまいます。しかし、同時に卵胞は、発育にともない卵胞ホルモンを分泌しはじめます。そうすると、卵胞は、自分の他にも大きくなり始めている卵胞があることがあることが分かります。ここで負のフィードバックがかかり発育を止めてしまいます。こうして、感受性の違いにより最後には1つの卵胞だけが排卵するまで発育します。
ホルモン補充周期の場合には、最初から卵胞ホルモンを服用しているため卵胞の発育が抑制されます。
しかし2から8%くらいの確率で、卵胞が発育して排卵する事があります。そうすると、移植に悪い影響がある可能性を考慮して、移植をキャンセルする事が多いと論文の著者らは述べています。しかし、ホルモン補充周期での排卵が、移植に影響を与えるか明らかにはなっていません。そこで、今回紹介する論文では、ホルモン補充周期中に排卵が起こった場合の移植結果への影響を調べました。
タイトルから、結果が分かってしまっていますが、そのまま鵜呑みにはできない部分もありますので、詳しくはこちらの動画でご確認ください。