精子の状態と精索静脈瘤

精子の状態と精索静脈瘤

精索静脈瘤はそのほとんどが、左の精巣周囲にできます。詳しい話は省きますが、左右の精巣静脈が左右対称でなく、左側の静脈のルートが圧迫されやすいことにより、起こります。
体をめぐる血液は体温と同じです。血液は精巣やその他の臓器に酸素や栄養を運び入れ、老廃物などの不要なものを運び出します。精索静脈瘤ができ、静脈の流れが滞ると、精巣周囲の温度を上げる、また、老廃物もそこに滞りがちになるので、精巣に悪い影響を与えると考えられています。
精巣に悪影響を与える物質の中には精子の染色体断片化の原因になる活性酸素もあると考えられています。

以前は、精索静脈瘤治療手術をおこなっても、精子の状態は改善しないと、世界的に有名な科学雑誌に発表され、精索静脈瘤の手術の価値が揺らいだことがありましたが、その後、泌尿器科の先生方の努力によって、手術による精子の改善は認められることが示されました。
私は産婦人科医なので、手術の経験はありませんが、手術前は、重症の乏精子症であった方が、手術後に精子の状態が正常に改善した経験はあります。
造精機能にかかわる部分は多くあり、一概に、精索静脈瘤の手術をすれば改善するとは言い切れませんが、統計的には、一般精液検査での精子の状態は改善します。

手術前後で、精子DNA断片化指数(DNA fragmentation index DIF)は変化があるかについては、わかっていないようですが、普通に考えれば、手術により、造精子機能への負荷が軽減されるため、改善すると思います。