Oak Journal Review: 加温後の胚盤胞の形態は移植成績と関連しているか?

Oak Journal Review: 加温後の胚盤胞の形態は移植成績と関連しているか?

検査部の奥平です。
2月7日に院内で開催された勉強会より、論文紹介(Oak Journal Review)の内容をお届けします。
今回ご紹介する論文は、

Post-warming embryo morphology is associated with live birth: a cohort study of single vitrified-warmed blastocyst transfer cycles.
Allen M, Hale L, Lantsberg D, Kieu V, Stevens J, Stern C, Gardner DK, Mizrachi Y.
J Assist Reprod Genet. 2022 Jan 18. doi: 10.1007/s10815-021-02390-z.

です。

まず、論文の内容に入る前に、凍結保存(cryopreservation)の用語について説明します。凍結保存の方法には、緩慢凍結法(slow freezing)とガラス化法(vitrification)の2種類あります。現在では、卵子や胚の凍結保存にはガラス化法が圧倒的に多く用いられています。ガラス化とは、液体が結晶を形成しないまま固体となる現象のことです。したがって、細胞は凍っておらず、ガラス化状態となっております。凍結(freezing)の場合は温める際に融解(thawing)と表記しますが、ガラス化(vitrification)の場合は加温(warming)が学術的には正しい表記となります。よって、今回の論文紹介では、専門用語としてガラス化と加温を用いています。しかし、実際に患者様に説明する際は、専門用語では分かりにくいため、ガラス化保存の場合であっても便宜上凍結と融解でお伝えしています。

さて、前置きはこれぐらいにして、論文の内容に移ります。
ガラス化前の胚盤胞の形態学的等級付けは、胚の発生能(妊娠の可能性)を推測し、治療結果を予測するための確立された評価指標であることはよく知られています。例えば、胚盤胞の拡張の程度およびTE細胞のグレードは出生率と相関することが報告されています。しかし、加温後の胚盤胞の形態の特徴と結果予測に関するエビデンスはあまりありません。また、研究によって結果が異なっており、加温後の胚盤胞の再拡張および細胞生存の程度が移植結果と相関するとする報告もあれば、一方で相関しないとする報告もあります。さらに、PGT-A胚における加温後の形態と移植結果に関する報告はありません。

そこで本研究では、PGT-A未検査胚盤胞および正倍数性胚盤胞において、加温後の形態が出生率と相関しているか調べています。そして、加温後に形態不良であった場合にどうすべきかについても検討しています。
詳細は動画をご覧ください。