不妊治療の保険適用に関して

不妊治療の保険適用に関して

医師の田口早桐です。

ここのところ毎日4月からの不妊治療の保険適用に関しての質問を受けます。
いくつか、取材へのコメントもしてきました。
現時点では詳細までは分かりませんが、年齢制限が43歳であること、40歳で適用できる回数が分かれること(40歳までは6回、以上は3回まで)は、これまでの自治体からの助成金の方式を踏襲しているようです。

患者さん同様、私も気になるので、最も額の大きい「採卵から凍結まで」の費用について、保険点数を用いて試算してみました。
当院の平均的な採卵数や凍結数、採卵9個、胚盤胞凍結3個を、当てはめました。

保険点数からの総額は、体外受精で34万、顕微授精で40万程度でした。それに薬剤の費用や超音波検査、麻酔の費用を足し合わせるとたぶん40~50万程度になります。
その3割負担ですから、自己負担額は12~15万程度になるのではないでしょうか?
また、高額療養費制度を利用すると、さらに負担は減ります。

上記と同様の条件で、現在の当院のHP料金表から計算すると、採卵~凍結の部分の料金は(税抜き)、体外受精で31.2万、顕微授精で39.5万になりますので、この部分の保険の点数のつけ方は(当院にとっては)妥当だと考えることができます。

また、自費だと患者さんにとって負担が大きいのが、消費税。
全体の額が大きい分、とくにそうですが、保険の場合、消費税はかかりません。
これはかなり大きいと思います。

では、問題点はどこかというと、

1. あくまで(厚生労働省の考える)標準的な治療のみとなる。
新しい技術、特別な技術は、混合診療禁止の原則に則って、使えない。使う場合は全額自費となる。
なので、不妊治療で最も求められる、「テーラーメードな」治療が困難
(現在、一部の技術は、先進医療として追加で使えるように調整がなされています。)。

2. 治療において、胚の凍結保管の果たす役割が大きいにも関わらず、細かく点数化されていない。
個々の事情に合わせた凍結の予定がたてにくい。
(あまりに長くなるので、細かい説明は省きます。)

3. 2とかぶりますが、採卵してすぐに移植すること(新鮮胚移植、もしくはいったん胚を凍結したら移植してしまってから採卵するような流れ)が強く想定されており、現状の、採卵して状態のよい胚をいくつか凍結してから融解胚移植をする、というような順序があまり想定されていなさそう。

要するに、想定されている治療が、現状と乖離している、ということでしょうか。

 

いろいろ思うことはありますが、最終的には、保険診療の原則から考えると、致し方のないことだとは思います。保険診療は、確立した治療、標準的な治療、そしてそれを忠実に守ることが要求されますから。

一部ではありますが、患者さんの負担が少しでも減ることは、我々にとって嬉しいことです。
最近は体外受精の助成金申請が非常に増えています。保険適用とともに制度が廃止になることが理由だと思います(4月以前に治療を開始した場合は、しばらくは申請可能)。
助成金申請の手続き、それから今後新たに発生するであろう様々な手続きに関して、お手伝いできるように我々も準備していきたいと思います。

2022年4月からの不妊治療の保険適用料金についてのお知らせ