子宮外妊娠の診断について

子宮外妊娠の診断について

医師の田口です。

自然妊娠での子宮外妊娠の発生率は1%程度と言われている一方、体外受精での子宮外妊娠の発生率は5%程度と高いと言われています。体外受精に至った原因に卵管の機能異常によるものが相当程度あるので、そのような例では子宮外妊娠が発生しやすいからのではないかと推察されます。

さて、つい先日も当院で、体外受精妊娠後の子宮外妊娠疑いで高次医療機関を受診いただいた方がいました。転院直後、受診先で子宮内に胎嚢が見つかり、子宮内妊娠と分かって一安心。ほっとするやら、患者さんを不安にさせて申し訳ないやら、紹介先医療機関に対しても手を煩わせてしまって肩身が狭いやら、という状況でした。実は年に1~2度、同様のことがあります。どうしてこのようなことが起こるのか、理由(言い訳?)を書きますね。

子宮の中に胚が着床した、という証明は、超音波検査による肉眼での判断しかありません。それも、ある程度の大きさになってからでないと、判断がつかないことも多いのです。子宮内の構造で胎嚢でないものが胎嚢に見えたりしますし、筋腫などの影響で観察しにくいこともあります。はっきりと「これが胎嚢です」といえるのは、サイズ10mm程度になってからです。所見が分かりにくくても、成長が順調なら日々大きくなるので、1~2日経つと所見が全く変わります。しかし、成長が良くない場合は、診断が難しくなります。

そのような場合は、HCGという、着床部位から分泌されるホルモンを測りつつ、子宮外妊娠のリスクを判断します。通常HCGが1500I/mlを超えたらほとんどの例で胎嚢が確認できます。ただし、それも絶対ではなく、3000単位でも確認できない例もあります。子宮内に胎嚢が見えないのにHCGが高値の場合は、数日おき、または連日受診していただいて、超音波検査とHCGの値をフォローします。そして、HCGが上昇しているにもかかわらず子宮内に胎嚢が見えない場合、子宮外妊娠の可能性が高くなります。

なぜ、子宮外妊娠の診断にそんなに神経質になるかというと、下記の2つの理由からです。

1)卵管破裂等、緊急性を要する状態になる可能性がある。

2)早期に診断をつけることで、手術をせずに薬剤投与で治療をすることが可能な場合がある。

・・・診断の難しさを感じ取っていただけたでしょうか?

いずれにしても、子宮外妊娠が疑われる場合は、万が一にでも緊急を要する事態になった場合に備えて、疑いが高まった段階で、高次医療機関に紹介するようにしています。