医師の田口です。
今回の不妊治療の保険適用について、個人的に思うこと。「43歳を超えたら保険は使えない」ということについて。年齢制限をする意味があるのか、と思います。
今日も、年齢制限のせいで保険適用を受けることができない患者さんが、「今回初めて心が折れそうです。」と言っていました。とても正直な方だと思いました。今まで頑張って治療をしてきて、4月からほかの患者さんは保険適用になるので負担が減る中、自分は10割負担のままで続けなければならない・・・。辛いと思います。
なぜ年齢制限があるかというと、「治療の効果が期待できないので」ということなのですが、極論かもしれませんが、95歳でも病気(治癒が期待できない)で高額な手術を受けるではないか、と、言いたいです。
43歳前後で不妊治療を受けている人たちは、保険料をずっと支払ってきており、子供を授かって充分育てていける体力経済力のある人たちです。助成金にも年齢制限はありますが、保険制度と助成制度では、意味が違います。
バイアグラの処方に年齢制限はありますか?精巣精子摘出術にも年齢制限はありません。
43歳の壁、40歳の壁(40歳以降は適用回数が制限される)、とても意地悪な制度だと思わざるを得ません。不妊治療を受けている女性同士のシンパシーを破壊してしまうインパクトがあります。
個人的には、年齢制限を設ける必要はない、もしくは、平均閉経年齢の50歳を制限とするくらいでよいのではないかと思っています。そう思う理由は以下の通り。
1)年齢とともに取れる卵胞発育が悪くなり、採卵数が減るので、体外受精にかかる費用が減る。
2)タイミング法と人工授精は保険が適用になるのであれば、治療効果云々という理由は成り立たない。
3)自己負担が安く済めば際限なく治療を続けると想定しているのかもしれないが、そもそも6回までという制限がある。何も年齢で区切ることはない。
年齢が高くなるほど、治療は長期にわたります。結果が出なければ、そのまま自費で治療を継続する方が多いと思われますので、お金の問題というよりは、「女性に対してだけ、年齢を問題にする」ことに対する不快感ですね。私もかなり不快です。