医師の田口です。
PGTーAのRCT論文が、 New England Journal of Medicine誌 (November 25, 2021 Vol. 385 No. 22)に掲載されています。
日本語抄録は、下記です。
Live Birth with or without Preimplantation Genetic Testing for Aneuploidy
英文抄録:https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2103613
この論文に関するSounding Board記事はhttps://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMsb2101718?query=recirc_curatedRelated_article
そして、2月末にでた、この論文に対するレターは下記です。
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc2119856?query=recirc_curatedRelated_article
いろいろ議論はあるようですが、日本語抄録を見ればわかるように、「良好胚盤胞を 3 個以上有する女性において,従来の IVF による累積生児出生率は,PGT-A を用いた場合と比較して非劣性であった.」という結果です。非劣性試験については下記の新谷先生(現在、大阪市大)の解説がわかりやすいでしょう。
https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2012/PA02971_04#:~:text=%22%E9%9D%9E%E5%8A%A3%E6%80%A7%22%E3%81%A8%E3%81%AF%EF%BC%8C,%E7%A0%94%E7%A9%B6%E3%81%AB%E4%BD%BF%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
「”非劣性”とは,すでに有効な治療薬が存在し,新薬は副作用が少ないなど既存薬よりも利点があるといった場合,既存薬に対し有効性において優越性が証明できなくても,劣っていないことが証明できればそれでよし,といった研究に使われます。」
今回、従来の IVFとPGT-A活用のIVFでは、累積生児出生率は、変わらなかった。
要は、(PGT-A活用で大幅に改善したということではなく)劣ってなかった、という結果でした。
PGT-Aによって理論的に期待される数字にならない可能性として、TE細胞を一部採取するということによる侵襲や、長期培養による侵襲も考えられると思います。
ただ、これも、全体を見渡して差がなかったとしても、ゲノムを利用した個別化医療という側面においては、否定されるものではないと思います。
今後、PGTに関しては、先進医療Bの枠での審議となりますが、先行きに注目したいと思います。
尚、日本産婦人科学会がPGT-Aの適応拡大に関するパブリックコメントへの共通回答としてまとめた下記の中にも、冒頭の論文が引用されています(17ページ)。
https://www.jsog.or.jp/activity/pdf/5_pgt-a_sankou.pdf