新潟大、培養士不足で新規体外受精中止

新潟大、培養士不足で新規体外受精中止

医師の田口です。

新潟県の医療の中核を担う大学病院、新潟大学医歯学総合病院産婦人科で4月から、新規の体外受精が休止されることが発表されたそうです。
理由は、「胚培養士」の人員不足とのこと。4月からの不妊治療の保険適用にあたり、ステップアップを考えている患者さんも多くいると思いますが、困ったことになりましたね。

新大病院によると、休止するのは採卵術、卵子凍結、胚(受精卵)凍結ということです。すでに凍結している胚の移植に関しては、引き続き対応とのことですが、培養士が不足している状態で大変だと思います。

「同病院では3人の胚培養士が勤めていたが、昨年10月に1人が辞めたほか、ことし3月末に退職する1人の欠員も補充できず、体制が維持できなくなった。」とのことなので、まだ1人はいらっしゃるようです。ただ、1人で培養室を切り盛りするのは、難しいでしょうね。

多分、医師が凍結受精卵の融解作業を手伝うことになるのだろうと思いますが、これが想像以上に大変です。弊院の胚培養士の皆様の日頃の仕事ぶりにあらためて頭が下がる思いです。

前日からの培養液準備に加え、取り違え間違いを防ぐための様々な手順、そして当日も朝から融解作業になりますが、当然通常は一人で行わず、すべてダブルチェックトリプルチェックが必要です。
また、非常に大事なのは、精神的安定。
間違いのないように、手元が狂わないように、気持ちが落ち着いた状態をキープしてかつ邪魔が入らない状態でないといけません。院内から連絡があるかもしれない、という状態ではよろしくないと思います。医師は外来や病棟処置で忙しい中で培養室業務をこなすことになりますから、邪魔(必要な連絡なのですが)の入らない状態をどれだけ確保できるかが問題になるでしょう。

新大の2021年の採卵件数は152件、胚移植は179件だったそうです。
新潟県では、県内にARTを行う指定医療機関は新大病院を含め15カ所あるそうですので、患者さんに負担のかからないように連携が取れることを願います。
ただ、日本中、どこの不妊治療機関でも優秀な胚培養士の絶対数が不足しており、今回の事案は、その問題点が露呈したのだと思います。

幣院では幸い優秀な胚培養士に恵まれていますが、それでも、常に優秀な人材の確保及び育成に尽力し続けています。

https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/43239
「新大病院が新規体外受精休止へ」(2022年3月29日配信:新潟日報デジタルプラス)