医師の田口です。
Yahooニュースを見ていたら、ドバイ在住のモデルさん(日本人)が、第2子の不妊治療のため、3か月日本に滞在したが、今回はうまくいかなかった、という記事を見つけました。
第1子のときに凍結していた胚を移植したが、着床せず。
再度採卵もしたが、それもうまくいかなかったとのこと。
ほんの20年前までタブーともいえた話題。
不妊治療を受けていること、ましてやその詳細まで当人が口に出していうということは、考え難かったです。
隔世の感を覚えます。
隔世の感といえば、今月28日に日本赤軍の重信房子元最高幹部が20年の刑期を終えて出所したとのことですが、逮捕されてからの22年の間に世界が大きく変化し、生殖医療の技術も、取り巻く状況も、また我々の意識も、様変わりしましたね。
彼女が逮捕された時の潜伏場所が割と近隣でしたので、つい重ね合わせてしまいました。
話を戻しましょう。今回の記事ではドバイ在住での不妊治療ということでしたが、当院は以前から海外在住者の不妊治療や卵子凍結がとても多いのが特徴です。
ドバイ、パキスタン、シンガポール、中国、モンゴル、香港、台湾、アメリカ、フランス、スペイン、スリランカ、ブラジル、カナダ…と今頭に浮かぶだけでもどんどん出てきました。まだまだあります。
しばらく新型コロナのために、行き来が大変だったのですが、それでも隔離期間を利用してその間に融解胚移植の準備の投薬をするなど、いろいろ工夫をしました。
今現在、新型コロナもやや落ち着き、海外への出張などの話も最近よく患者さんから出るようになりました。
また、海外でお仕事をしていて、一時的に帰国して卵子凍結や不妊治療をしたいという相談も増えてきました。
新型コロナ前ほどの状態にはなっていませんが、かなり動けるようになりました。
海外にいる方とオンラインでお話をして、日本滞在期間に時間の無駄なく治療ができるようになったのも、ひとえに技術の進歩のおかげです。
つまり、ITやIoT、そして、生殖医療の技術の進歩のおかげですね。
もちろん、技術が万能という訳ではなく、人間も動物ですから、人と人との繋がりの大切さなど、様々な側面も幸福に寄与します。技術は人間味の無い無味乾燥なものではなく、時に、技術の力が人々の助けになることも多いと思います。
要は技術をどのように賢く巧く使うか、人間が知恵を絞っていくことが、これから、ますます重要になってくると思います。
22年という歳月、そして技術の進歩。幸福の追求において、以前には無かった選択肢が多くあります。
しかし、子供を欲しいという気持ちは以前となんら変わりません。
私自身が体外受精で子供を授かったのは20年前。未だにその焦燥と絶望、期待と不安は忘れられません。
不妊治療まで至らず、卵子凍結をされている方たちも同じ気持ちだと思います。
今現在、その渦中にある人たちに対して、出来るだけのことをしたい、と思います。
参考:https://news.yahoo.co.jp/articles/73c75f7c792b8f3031373386466389ddbd202fea