体外受精の治療成績について

体外受精の治療成績について

医師の田口です。

患者さんに、とくに初診時の質問で受けることがあるのが、「貴院の治療成績はどのくらいですか?」というもの。

多分患者さんは、クリニックによって治療技術に大きな差があると思っていて、ゴッドハンドを持つ医師に診てもらいたいと思っているのですよね。もちろん気持ちはよくわかります。
ただ、期待を裏切って申し訳ないのですが、これだけ情報伝達の早い世の中です。特別なことというのはあまり存在しないのです。
私の印象では、1回の同じ条件の体外受精周期を比較して、極端に成績の悪いクリニックもなければ、極端に成績の良いクリニックもありません。ホームページなどで治療成績を公開しているクリニックもありますが、大抵は、サンプルを調整しており(40歳以上を除外するなど)、結果、どうとでも数字を調整することができてしまうのが実状です。
また、評判のいいクリニックにはどうしても難治例や年齢の高い患者さんが集まります。単純に比較出来ません。


では、どこへ行っても一緒なのか、というと、それはそうではありません。
単純に採卵や胚移植の結果を比較するよりもっと大切なこと、それは、私が考える限り、以下のような事です。

1.培養士、医師ともまずは標準的なプロトコールをきちんと守れることと、手技がしっかりしていること。正直な性格であること(たとえ愛想が悪くても)。

2.治療経過全体を見渡して考えるクリニックかどうか。子宮筋腫を抱えている時に、どの時点で着床に影響していると判断するか。良好胚盤胞でなければ移植しても意味がないと考えるのか?低刺激で少ない採卵数でいいのか?精液所見不良がどの程度胚の発育不良に関与していると考えるのか?……このプロセスを蔑ろにすると、無駄な費用と時間を費やすことになります。


2については、当院では、採卵の後、採卵や移植のプランを立てる時、妊娠判定が陰性だった時、治療経過を振り返って、次のプランを考える時間を設けています。

治療はサクサク無駄なく進めるべきですが、時々立ち止まる時間はとても大切です。