https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC11410666/
ケンブリッジ大学が2024年9月11日、Nature誌に発表した最新の研究論文「卵巣老化、がんリスク、新生変異率における遺伝的関連性」により、生殖年齢に大きく影響を与える遺伝子が特定されました。英国のバイオバンクにある、エクソームデータから、生殖年齢に大きな影響を持つ9種類の遺伝子が特定され、それぞれの詳細について調べたものです。今回の特定遺伝子変異を持つ人たちをスクリーニングして、生殖年齢が短いか否かを判定して、卵子凍結も含めた出産計画を遺伝カウンセリングしつつ支援することが可能になるかもしれません。
9つの遺伝子と生殖年齢の関係
今回の研究では、生殖年齢に深く関与する9種類の遺伝子が特定され、それぞれの遺伝子がどのように女性の生殖能力に影響を与えるかが詳細に調査されました。特に注目すべきは、これらの遺伝子変異を持つ方々をスクリーニングすることで、生殖年齢が短縮される可能性があるかどうかを判定し、将来的な出産計画を支援することが可能になった点です。卵子凍結を含む生殖計画を遺伝カウンセリングと併用することで、個別化された医療が提供されることが期待されています。
ZNF518A遺伝子の重要性
9つの遺伝子の中でも特に重要な役割を果たしているのがZNF518A遺伝子です。この遺伝子変異は、初潮の遅れと閉経の早期化に強く影響を与えることがわかっています。卵子の正常な維持において、この転写因子の働きは特に重要であり、この遺伝子が異常を起こすと、卵巣の老化が加速する可能性があります。早期の検査やスクリーニングによって、卵子凍結や他の生殖支援医療が適切なタイミングで行われることが重要です。
生殖年齢に関連する遺伝子変異とがん等のリスク
さらに、この研究では、特定の遺伝子変異ががんのリスクと密接に関係していることが明らかになりました。9種類の遺伝子変異のうち、BRCA2を含む4種類の遺伝子が、がんの発症に関与していることが確認されています。BRCA2は乳がんや卵巣がんのリスクを高めることで知られており、これらの遺伝子の変異を持つ方々には、定期的ながん検診や予防的な医療対応が重要になります。
今回リストアップされた遺伝子のうち3種類は既知ですが、新しく特定されたSAMHD1遺伝子については、その機能不全は、脳の炎症性変性疾患遺伝子として知られており、今回の研究で新たに、前立腺ガン、男女の中皮腫のリスク遺伝子にもなることが示されています。
そして、がんのみならず、https://cir.nii.ac.jp/crid/1390001205517920512のように、脳障害にも、この遺伝子変異は関与しています。がん予測はもちろん、精神神経科疾患予測も踏まえた生殖補助医療が、一気に進展する可能性があります。
個別化医療と新たな妊孕性医療の展望
この発見により、”個別化医療(Precision Medicine)”が新たな段階へ進むことが期待されています。特に、卵巣老化やがんリスクを持つ患者に対して、よりパーソナライズされた医療アプローチが求められる時代になっています。医療法人オーク会でも、遺伝子検査を基にした卵巣機能の評価やがんリスクの予防に取り組んでいくことができるでしょう。これにより、新たながん妊孕性の医療が構築され、より多くの女性が健康的なライフプランを描くことができるでしょう。
デノボ変異と次世代への影響
最後に、今回の研究では”新生変異(デノボ変異)”についても詳細に調査が行われました。親と子供のゲノムを比較するトリオコホート研究により、今回リストアップされた遺伝子変異が、次世代でのデノボ変異率を高めるかどうかが調べられました。その結果、これらの遺伝子変異はデノボ変異率を増加させないことがわかりました。つまり、生殖年齢が短縮しても、子供に遺伝的な新生変異が増加するリスクは低いという、ポジティブな結論が得られました。
まとめ
ケンブリッジ大学は遺伝子変異との関連性について新たな視点を提供しました。医療法人オーク会では、最新の研究成果をもとに、患者様一人ひとりに最適な医療を提供していくことをお約束します。卵巣機能のスクリーニングやがんリスクの予防、(新たな科学的根拠に基づく)卵子凍結戦略の提案、そして遺伝カウンセリングを通じて、皆様の健康と未来を支えていきます。