近年、胚移植時に用いられるさまざまな技術や手法に関する研究が進展しています。Hum Reorod Update誌(2022年)の「胚移植の時に実施するオプションや手技はいろいろあるけど、何が妊娠や出産に効くかを調べました」という内容の、システマティックレビューとメタアナリシスに基づく最新の知見をもとに、特定の手技が妊娠率や出産率にどのような影響を与えるかを紹介します。
1)hCG子宮内投与
- 臨床妊娠率
hCGの子宮内投与により臨床妊娠率が有意に上昇する(17報の研究、RR 1.232, 95% CI 1.099–1.382)。 - 生児出産率
一方で、生児出産率の有意な上昇は確認されなかった(7報の研究, RR 1.132, 95% CI 0.924–1.387)。 - ポイント
500 IUの投与が最も一般的で、効果が安定しているようです。
2)ヒアルロン酸子宮内投与
- 臨床妊娠率
ヒアルロン酸の投与はプラセボと比較して臨床妊娠率を有意に向上させる(9報の研究, RR 1.457, 95% CI 1.197–1.261)。 - 生児出産率
生児出産率も有意な上昇を示した(4報の研究, RR 1.471, 95% CI 1.092–1.982)。 - ポイント
国内でも保険適用されているため、実臨床での活用が進んでいます。
3)G-CSF子宮内投与
- 臨床妊娠率
G-CSFの子宮内投与は、プラセボと比較して臨床妊娠率が有意に上昇(4報の研究, RR 1.774, 95% CI 1.252–2.512)。 - 生児出産率
生児出産率への効果についてはエビデンスが不足しており、さらなる研究が求められます。
4)超音波の使用
- 臨床妊娠率
超音波を使用した移植では臨床妊娠率が有意に向上(24報の研究, RR 1.265, 95% CI 1.151–1.391)。 - 比較検討
経腹エコーと経膣エコー、3Dエコーと2Dエコーの比較では、いずれも有意な差は観察されませんでした。
5)子宮頚管粘液の除去
移植前に子宮頚管粘液を除去することで妊娠率が改善される可能性が指摘されていますが、メタ解析の結果では有意な効果は確認されていません。
その他の手技
- 移植後の安静
ベッドでの安静は臨床妊娠率を低下させる可能性が示唆されています(RR 0.857, 95% CI 0.741–0.991)。 - 移植カテーテル
ソフトカテーテルの使用が妊娠率を改善する結果が得られています(RR 1.122, 95% CI 1.028–1.224)。
当院での取り組み
:子宮内PRP注入 子宮内エクソソーム注入 そして子宮内膜ポリープ切除
1)から5)に関しては、すでに当院でずっと以前から取り入れている内容です。とくに目新しい方法とは言えません。さらに最近では、子宮内膜が薄くなくても、PRPの子宮内注入やエクソソームの子宮内注入による子宮内膜の着床環境改善に取り組んでいます。とくにエクソソーム注入に関しては、現時点でほとんど取り組んでいるクリニックはないと思います。
また、最近では、子宮内膜ポリープの切除を積極的に行っています。従来ある程度の大きさのもののみが着床に影響を与えるとして、小さなものは手術によって着床を改善しないといわれてきました。しかし、当院で小さな子宮内膜ポリープであっても、除去することによって妊娠率の向上が期待できることを示唆するデータが積みあがっています。梅田院が中心となって始めましたが、最近では銀座院に導入、開始いたしました。
胚移植時の手技やオプションに関する研究は、臨床妊娠率や出産率にどのような影響を与えるかを明らかにする重要な取り組みです。今回紹介したデータは、特定の技術が効果的であることを示していますが、一部の手技についてはさらなる研究が必要です。今後も最新の知見を取り入れながら、治療の選択肢を広げることが期待されます。
参考:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35325124/
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