生殖医療専門医が考える高額療養費制度改悪の問題点

生殖医療専門医が考える高額療養費制度改悪の問題点

生殖補助医療における高額医療費の現実

不妊治療、とりわけ体外受精では、採卵・胚培養・移植といったステップごとに多くの費用が発生します。保険適用の枠組みでは、移植の回数に制限があるため、良好胚を確保するまでに、回数制限のない採卵を繰り返さざるを得ません。このため、患者の経済的負担が非常に大きくなるのです。

また、形態的に完全ではない胚の中にも、妊娠・出産につながる可能性のあるものがあります。しかし、現行の保険制度の枠組みに従うことで、それらの胚を移植する機会を得られないこともあり、結果として妊娠成立までの期間が延長し、最終的な成功率が低下する可能性も否定できません。

エビデンスと最新の医療知見の重要性

生殖医療の分野では、エビデンスに基づいた治療が重視されます。しかし、そのエビデンス自体が常にアップデートされており、例えば卵巣機能不良の患者に対しては、新鮮胚移植を繰り返すことが妊娠成功への近道になる可能性が示唆されています。したがって、現在の保険制度の枠組みに従うことで、患者にとって最適な治療法が制限されてしまうリスクがあります。

高額療養費制度改悪がもたらす影響
  • 経済的負担の増大:保険の適用範囲が限られることで、自己負担額が大幅に増加し、治療の継続が困難になる。
  • 妊娠成功率の低下:適切な治療法が選択できなくなることで、妊娠に至るまでの時間が長くなり、結果的に妊娠機会を逃す可能性がある。
  • 医療の進歩との乖離:常に変化するエビデンスに即した治療が提供しづらくなる。
専門医としての提言

生殖補助医療は、多くの選択肢を必要とする分野であり、標準的な保険診療の枠組みの中だけで治療を完結させることは難しい現実があります。したがって、高額療養費制度の改悪により、不妊治療を受ける患者の選択肢を狭めることは避けるべきです。政府は、患者が自らの状況に応じた治療法を柔軟に選択できるよう、制度設計を見直すべきです。

私たち専門医は、最新の医学的知見をもとに、患者にとって最善の治療を提供する責任があります。今回の制度改変に対して、医学的根拠をもとにした政策の見直しを強く求めたいと思います。


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