
先日、Nature Metabolism誌に掲載された日本発の研究が、国際的にも注目されています。
タイトルは「Seasonal conception in humans programs brown adipose tissue activation and systemic metabolism」。
この研究では、寒い時期に受精したヒトは、褐色脂肪組織(BAT)の活性が高く、1日のエネルギー消費量も多く、BMIや内臓脂肪が低い傾向にあることが示されました。これは、受精時の寒冷曝露がエピジェネティックに影響し、その後の代謝の状態を決定づけている可能性があるという観察結果です。
動物実験では、温度ストレスが脂肪細胞の可塑性やエネルギーバランスに影響することが知られていましたが、今回の研究はヒトにおける同様の現象を初めて大規模に報告したものです。気象データとの突き合わせにより、受精期間中の気温の低さと日々の気温変動がBAT活性に関与していることも示されました。
この結果が再現性のあるものであれば、冬に受精した受精卵から生まれた子供は、夏に受精した子供よりもエネルギー代謝に優れ、将来的に肥満や生活習慣病のリスクが低い可能性があるということになります。つまり、受精時の環境がエピジェネティックな影響を通じて、子の健康に長期的な影響を与えているという点が、今回の研究の核心です。
さらに、先日同じくNature Metabolism誌に掲載された「妊娠中の食生活」が子に及ぼす影響を示した研究も踏まえると、今後のPrecision Medicine(個別化医療)への応用が期待されます。
次のステップとして重要なのは追試です。たとえば、冬に受精した受精卵を移植して生まれた子供と、真夏に受精した受精卵を移植して生まれた子供の成育アウトカムを比較するようなレトロスペクティブ研究は、大変価値があると思われます。
受精という生命の始まりの瞬間に、季節がどこまで影響しているのか。科学的にも、臨床的にも、そして少しロマンを感じさせるテーマでもあります。今後のさらなる研究に注目したいところです。
ART Cell誌 COVID-19 DNA IVF Nature Metabolism誌 Nature誌 PGT-A X染色体 Y染色体 がん ジネコ ダウン症候群 プレコンセプションケア ホルモンバランス 不妊治療 不妊治療バブル 不育症 体外受精 保険適用 個別化医療 健康状態 副作用 医療法人オーク会 卵子凍結 培養士 妊娠 妊娠中の食生活 妊娠率 子宮内膜ポリープ 子宮内膜症 年齢 日本エンドメトリオーシス学会 染色体検査 染色体異常 治療法 流産 生殖医療 着床率 精子 細径子宮鏡 自費診療 遺伝子 遺伝的多様性 高度生殖医療