医師の田口早桐です。
最近読んだ論文、Deciding about fertility preservation after specialist counseling (Human reproduction, Vol.29, No.8pp.1721-1729,2014)では、不妊治療を受けている人ではなく、病気でホルモン治療が必要なので、将来の妊孕性が危ういために卵子や受精卵が望ましい人たちが、カウンセリングを受けて凍結を決断するのに当たって、カウンセリングが意味をもつのかどうか、という調査がされています。
カウンセリングを受けた人たちからの質問に対する回答を解析した結果、カウンセリングの時間がもっと必要だったという意見、もっと質問をしたかったと言う意見が多かったようです。
卵子凍結はさしあたってパートナーがいない、などの社会的適応で凍結される方の場合、自分である程度調べて来られているし、自分で希望されていることなので話が早いのですが、乳がんなどで専門クリニックから診断がついたと同時に、治療開始までに卵子凍結が望ましいということで紹介されて来院された方などは、いろんなことが同時に押し寄せてパニックになっているので、まずは落ち着いてお話することが大事です。
カウンセリングが非常に有効です。
このような特殊な場合だけでなく、不妊治療の現場で、カウンセリングは本当に大事だな、と思います。
例えば他の一般の病気だと、何か体に不調があって患者さんが医療機関を訪れて、診断をして治す、ということになります。
検査をするのもお薬を処方するのも、病気を治すため。はっきりしています。
これが不妊治療となると、妊娠したくて患者さんはいらしているのだけれど、検査や治療ははっきりいって、なければないほど、患者さんへの負担が少ないのです。
良く美容医療と比べられますが、不妊治療は時間との戦い、確率との戦いなのではるかにシビアです。
我々医療者は、そこでどうしても「どうしますか?」と聞きはしても、積極的な働きかけをしませんから、どうしても治療が後手後手に回ります。肉体的精神的金銭的負担を考えると、そうなりがちです。
そして、きちんと患者さんが納得希望して治療に望まれるためには、充分なカウンセリングが必要です。
従来から当院では医師、看護師、培養士がそれぞれカウンセリングにあたってきましたが、時間もタイトですし、不十分で困っていました。
現在、当院では、コーディネーター(貞永麻千子)が、皆様の治療への不安や心配をお聞きしています。
メールで気軽に質問したり、お茶会も無料で頻繁に開催していますので、これからどんどんご利用いただこうと思っています。
これで不妊治療を受けられる方が、不安を抱えたままで過ごすことがなくなると思っています。