医師の田口早桐です。
現在、融解胚移植をする際、当院ではほとんどのケースにおいてホルモン補充周期で行います。
また、凍結胚はこれもほとんどのケースで5日目胚、つまり胚盤胞ステージです。胚凍結の技術が安定したことで、世界中どこでもたいてい単一胚盤胞移植が中心となっています。
これによって体外受精による好ましくない点、つまり、卵巣過剰刺激症候群と多胎を避けることができます。
今回ご紹介する論文では、凍結融解胚盤胞をホルモン補充周期で移植する場合、プロゲステロン補充の剤型が筋肉注射によるものとジェル(塗布剤)によるものとで成績がかわるかどうかを調べています。
結果は、妊娠率、着床率、流産率、生児獲得率等、変わりなかった、というものでした。同じ薬剤でも剤型によって体質に合う合わないがありますから、選択の余地があったほうがいいのは明らかです。
今まで発表された論文では、結果が変わらないという報告がある一方で筋肉注射のほうが成績が良いというものもありました。ただ、新鮮周期や3日目胚移植などの例ではなく、今回の論文では、ホルモン補充周期による凍結融解胚盤胞移植に限っていますので、その分価値があると言えるでしょう。
当院でもエストロゲン剤の剤型がいくつかの種類から選択できるようになっています(経口、ジェル、パッチ剤など)。プロゲステロンに関しても、選択できる種類をもっと増やしていきたいと考えています。
Progesterone replacement with vaginal gel versus i.m. injection :
cycle and pregnancy outcomes in IVF patients receiving vitrified blastocysts
Human Reproduction Vol.29 No.8 pp.1706-1711,2014