医師の船曳美也子です。
Safety and feasibility of performing two consecutive ovarian stimulation cycles with the use of letrozole-gonadotropin protocol for fertility preservation in breast cancer patients
Yolkan Turan,M.D. Innovation Institute for Fertility Preservation,New York Fertility and Sterility VOL.100 NO.6/ DECEMBER 2013
一昔前は、日本人のガンといえば胃癌でした。近年、男性は大腸がん、女性は乳がんが増加しています。私の周囲でも乳がんを発症した友人や知人が多数いますが、生殖年齢の女性が乳がんになった場合、その妊孕性の温存が問題になります。
今回の論文は、乳がんと診断された女性が、手術をうけてから化学療法をうけるまでの期間に、卵子凍結を行った周期が1回しかできなかったか2回できたかで、とれた卵子の数が増えたか、また5年後の再発率がかわったか、について調べています。
適応は45歳まで、ステージ3までの乳がんのかたで妊孕性温存を希望された方78名で調べています。手術のあとから採卵周期にはいって、1回か2回採卵した後に、化学療法を行っています。
結論からいうと、当然、2回採卵できた場合、凍結卵子数の合計は平均10個で、1回採卵の平均6個にくらべ多かったです。しかも、手術から化学療法までの時間はどちらも60日と有意差ありませんでした。また5年後の再発率にも差はありませんでした。
これは別の論文での紹介ですが、不妊専門医に紹介された時期が、乳がん手術の前と後では、前のほうが2回採卵できたケースが多く、また化学療法も24日も早くできています。
生殖年齢の女性が乳がんにかかった場合、妊孕性温存のために卵子凍結という手段は浸透してきていると思いますが、さらに、医師の連携や、情報の普及が必要だと思いました。
ちなみに卵巣刺激法は以下の通りです。
CD2or3よりletrozole(フェマーラ) 5mg/day開始。
その2日後よりFSH 150-300IU連日開始。卵胞計14㎜GnRHantagonist(セトロタイド) 250μg/日 連日開始。
2つ以上20-21mmの卵ができればhCG5000-10000IU注射。その35時間後採卵。
その日よりletrozole中止。
採卵後も3日毎にE2測定し、>250pg/mlなら約3-6日letrozol再開しE2<50pg/mlになるまで内服する。