医局カンファレンスです。
今回は慢性子宮内膜炎(CE)があると異常な子宮収縮が起こり、着床を阻害するかもしれないという論文を紹介します。(Fertil Steril 2015;103:1049-1052)
排卵前と黄体中期の子宮筋層の動きをCEと診断された子宮とそうでない子宮で比較検討しています。
また、子宮収縮の回数について、黄体中期はほぼ同等でしたが、排卵前ではCEのほうが多いことがわかりました。
(解説)
通常、卵胞期初期(月経開始から7日目ぐらい)は月経血を出そうとする上→下への動きが起こり、排卵直前から排卵期にかけては精子を卵管へ運ぼうとする下→上への動き、そして着床後は着床を妨げないように動きが無くなるのが通常です。
今回の結果を見てみるとCEではいろんな動きをしていることがわかります。CEがあると変化したリンパ球(形質細胞)によって内膜環境を変化させ、異常な子宮収縮を生み出して
と思われます。
CEは原因不明不妊の14%、初期流産を経験した人の23.6%に認められるといわれています。
また、反復着床不全の方の30.3%に認められることがわかっています。
そしてCEと診断された人の着床率は11.5%とかなり低く、着床の妨げになっていることがわかります。
さらに、子宮内膜症とCEの関係も以前より指摘されており、このような異常な収縮が起こることで、腹腔内への月経血の逆流が起こったり、子宮外妊娠が引き起こされる原因の一因と考えられています。
当院でもIFCE(着床不全検査)を行っており、CEと診断された方には抗生剤の投与により治療を行い、その後の移植で妊娠されている方が多数いらっしゃいます。反復着床不全の方はもちろんですが、移植後に月経様の痛みや下腹部の違和感を感じられる方、子宮内膜症の方は早めにCEがないか検査をお勧めします。