子宮内膜の厚みを改善させる方法

子宮内膜の厚みを改善させる方法

医師の松原高史です。

融解胚移植周期に、十分な子宮内膜の厚みを得るのが困難な場合があります。胚移植を予定していて、内膜が薄いために移植を延期したような場合は、患者さんはかなりの焦燥感を抱かれます。

今回は胚移植時の子宮内膜の厚みを改善させる方法が紹介された論文を紹介したいと思います。

胚移植時の子宮動脈血流および子宮内膜厚を改善する方法としての、シルデナフィル(Viagra腟錠)のやや古い報告ですが、今日私たちが外来で時として行っているバイアグラ腟錠による内膜改善法の根拠となる、優れた論文です。

Effect of vaginal sildenafil on the outcome of in vitro fertilization (IVF) after multiple IVF failures attributed to poor endometrial development.
Fertility and sterility, vol.78, issue.5, pp.1073-6, 2002 Nov

子宮内膜の増殖は子宮動脈血流に依存すると考えられています。
特異的ホスホジエステラーゼ阻害剤であるクエン酸シルデナフィル(Viagra)は、血管平滑筋を弛緩させる作用を有する一酸化窒素(NO)の血管拡張効果を増強する働きが知られています。
この論文では、子宮内膜が薄い不妊女性に対してシルデナフィルを腟内投与し、子宮内膜の厚さに対する効果と体外受精・胚移植の転帰を分析しています。

子宮動脈拍動指数(PI)は、シルデナフィル7日後に減少(血流量の増加を示す)し、シルデナフィルと吉草酸エストラジオールの併用は、全患者の血流と子宮内膜の厚さを改善しました。

また子宮内膜の発達不良に起因する胚移植不成功が2回以上連続する、40歳未満の105人の不妊女性に、シルデナフィル腟座薬(25mg、1日4回)を3~10日間投与して、ロングプロトコールを用いて体外受精・胚移植を実施しました。

結果は、105例中73例(70%; A群)は9 mm以上の子宮内膜厚でしたが、32例(30%; B群)はそれ未満でした。着床率および進行中の妊娠率は、A群(29%および45%)がB群(2%および0%)よりも有意に高くなりました。胚移植されたB群のうち、1例のみ着床したが流産となりました。B群では、59%の女性が子宮内膜炎の病歴を有していたのに対し、A群でのそれは44%でした。

シルデナフィルの腟投与は、調査された患者の70%において子宮内膜の発達を促進し、着床率および進行中の妊娠率が向上しました。子宮内膜炎の既往は、シルデナフィルに対する反応を低下させる可能性が示唆されました。

今回は当院で行っているシルデナフィル(Viagra腟錠)による、薄い子宮内膜厚を改善させる方法の根拠となる論文をご紹介しましたが、バイアグラ以外にも、有効な薬剤が知られていて(もちろん私たちが取り入れている治療もあります)、それらの治療法の有効性を検証した論文もありますので、次回またご紹介したいと思います。

今回これらの論文を読んで、改めてこれらの治療の重要性を認識することができました。