医師の田口早桐です。
Streamlining follicular monitoring during controlled ovarian stimulation: a data-driven approach to efficient IVF care in the new era of social distancing
Human Reproduction 2020年11月号より
コロナ禍で、お店やレストランも、できるだけ対面を避けるもしくは注意する方向で営業していますね。医療においても、不要不急の判断はとても難しく、体外受精や卵子凍結は命にかかわるものではないけれども、その人の人生においては大事なことであり、できるだけ早いうちに取り組んだほうがよいものであることは自明です。
現在当院では、できるだけそのバランスを取るべく努力しており、一つはオンライン診療を取り入れて、処置や検査以外の来院を極力減らすようにしています。これは、いままでのところかなり好評です。これまで手続きや結果説明、薬の受け取りのためだけに来院していたのをオンラインで行えるので、治療による負担が減るというご意見をよくいただきます。
今回ご紹介する論文は、できる限り周期中の卵胞チェックの回数を減らすとしたら、どのタイミングでの卵胞チェックがもっとも適しているか、を後方視的に分析した内容です。対象は、刺激周期での採卵周期2322周期です。トリガーの日とOHSS発生リスクを予測するのに、刺激開始から何日目の卵胞チェックが適しているかをMachine Learningで分析しています。
結果としては、刺激開始から5日目がもっとも適しているという結果が得られました。
通常、平均トリガー日は刺激開始から9日目くらいです。Fig2
機械学習によるとトリガー日の予想は刺激開始5日目以降から正確にできるようになるとの結果がでました。Fig3,4
またOHSSリスク予想は5日目以降で正確にできる、ということがFig5から分かります。
これは、当院で経験上行っていることと一致します。当院では、初回周期の場合(今までに刺激周期を行ったことのない方)、刺激開始から4日目、2回目以降の場合(初回ではないため、反応の状態が分かっている方)は、刺激開始から6日目に最初の卵胞チェックを行います。その時点で、大体のトリガー日とOHSS発生リスクを予想するのです。
経験上行っていることで「充分分かっているよ」ということでも、機械学習の結果と一致すると安心できますね。