Oak Journal Review :モザイク胚の形態動態学的特徴

Oak Journal Review :モザイク胚の形態動態学的特徴

検査部の奥平です。
8月2日に院内で開催された勉強会より、論文紹介(Oak Journal Review)の内容をお届けします。
今回ご紹介する論文は、

The morphokinetic signature of mosaic embryos: evidence in support of their own genetic identity.
Martín Á, Rodrigo L, Beltrán D, Meseguer M, Rubio C, Mercader A, de Los Santos MJ.
Fertil Steril. 2021 Jul;116(1):165-173. doi: 10.1016/j.fertnstert.2020.12.031.
です。

着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)は、胚染色体の本数の異常の有無を調べる検査です。これにより、胚を正倍数体(染色体の本数が正常)、異数体(染色体の本数が多いまたは少ない)、モザイクに分類することができます。モザイクとは正倍数性細胞と異数性細胞が混在した状態です。例えば、細胞を5個採取し検査した結果、正常細胞が3個と異常細胞が2個の場合、モザイク率は40%となります。胚全体の異数性は、配偶子形成時の減数分裂エラーに由来しますが、モザイク現象は胚分裂期の有糸分裂エラーによって生じます。近年の検査技術の向上によって、胚のモザイク性をより正確に検出できるようになってきました。しかし、モザイク診断には限界があり、モザイク胚の結果が、技術的なアーティファクトによるものなのか、それとも本来の発生能力によるものなのかは不明となっています。

また最近では、体外受精においてタイムラプスイメージングを使用することで、PGT-Aと胚の形態動態を組み合わせて重要な発生動態マーカーを見つけたり、染色体の倍数性を予測するアルゴリズムを構築したりする研究が登場してきました。そして、胚分裂期の異数性は、第1分裂から第2分裂までの間隔(t3-t2)や、第3細胞出現から第4細胞出現までの同期性(t4-t3)など、いくつかの細胞周期のタイミングにおける形態動態学的変化と関連していることが報告されています。さらに、次世代シーケンサー(NGS)で検査された高次のモザイク胚で形態動態の遅れが報告されています。これらから、形態動態学的測定とアルゴリズムを使用し、胚の発生ペースに基づいてモザイク胚を検出できる可能性が考えられます。よって今回紹介する研究では、染色体モザイクの程度が異なる胚の形態動態学的特徴を把握することを目的としています。

詳細は動画をご覧ください。