検査部の奥平です。
5月2日に院内で開催された勉強会より、論文紹介(Oak Journal Review)の内容をお届けします。
今回ご紹介する論文は、
Testicular sperm characteristics in men with nonobstructive azoospermia and their impact on intracytoplasmic sperm injection outcome.
Aboukhshaba A, Punjani N, Doukakis S, Zaninovic N, Palermo G, Schlegel PN.
Fertil Steril. 2022 Mar;117(3):522-527.
です。
男性不妊の一つに非閉塞性無精子症(NOA)があります。NOAとは、精子が作られていない状態、もしくは、作られる精子の数が著しく少なく精液中に精子が認められない状態のことです。NOAの原因は、不明な場合が多いですが、精索静脈瘤や遺伝学的要因などが挙げられます。しかし、精液中には精子がいなくても、精巣内に精子がごく少数存在していることもあります。そこで行われるのが、精巣内精子採取術(TESE)です。TESEでは、陰嚢を切開して精巣組織(精細管)を採取し、組織中から精子を探し出します。ただ、必ず精子が回収できる訳ではなく、NOAの場合では回収率は30%ぐらいとされています。
通常の顕微授精(ICSI)では、精液を遠心洗浄やスイムアップ法などで処理後、運動性と形態が良い精子のみを選んで、治療に用いています。それにより、ICSIの受精率や妊娠率が高まるというのは広く知られています。
一方、TESE患者の場合では、得られる精子の数が少なく限られています。また、精巣内の精子は、運動性がほぼなく、形態が不良な場合も多いです。以上のことから、TESE後のICSIに用いる精子を選別すること自体が非常に困難となります。そして、TESEで得られた精子の特徴とICSIの成績との関係の知見はほとんどありません。
そこで、今回の論文では、大規模なTESE-ICSIのデータを用いて、精巣内精子の特徴がICSIの成績へ及ぼす影響について検討しています。詳細は動画をご覧ください。
当院でもTESEを行っております。ご希望の方は男性不妊外来へご相談ください。