卵子の極体生検で卵子の染色体異常の推測が可能である

卵子の極体生検で卵子の染色体異常の推測が可能である

卵子が成熟して受精可能な状態になるためには、体の細胞が増えるのとは異なる分裂の仕方をします。
卵子と精子が一緒になるために、まず半分になっている必要があるので、染色体の数が受精の時に半分になります。
数が減るので減数分裂といいます。

減数分裂は2回起こります。
第1減数分裂と第2減数分裂。卵子では第1減数分裂がとくに重要です。
卵巣内の卵子は遺伝子量を2倍にして待機します。
排卵と同時に第1減数分裂が起こり、1倍になり、受精したと同時に第2減数分裂が起こって1/2になります。
そして同じく1/2である精子と一緒になって”1”になります。

卵子の染色体異常は、第1減数分裂の過程で正常な染色体の分離が適切に行われないことが原因とされています。
この分離が不正確に行われると、子細胞に正しい数の染色体が割り当てられないため、染色体異常が発生する可能性が高まります。
特に年齢の影響が大きく、女性の年齢が上がるにつれて卵子の分裂が正確に行われない確率が増加し、染色体異常のリスクが高まるとされています。

卵子は第1、第2減数分裂を経ても、見た目は1個の卵子なのです。
分裂した片方は、「極体」という小さな丸いものになって卵細胞の外に放出されます。
一見意味のなさそうな粒なのですが、そこには分裂した片割れの染色体が入っています。
排卵のとき、つまり第1減数分裂のときに放出されるのが第1極体、受精時に放出されるのが第2極体、といいます。

卵子の形成

【引用元】Quantitative Morphometrical Characterization of Human Pronuclear Zygotes – Scientific Figure on ResearchGate. Available from: https://www.researchgate.net/figure/7-Orientation-of-the-PN-according-to-the-polar-bodies-Computer-assisted-measurements_fig4_5317497 [accessed 13 Sep, 2023]



極体は、卵子にとって「要らないもの」なので、取ってしまっても卵子に影響はないといわれています。
理論的には、この極体を取ってきて染色体や遺伝子を調べて、もう一方の片割れである卵子の染色体や遺伝子の情報を推測することができます。
同じものが分かれているわけだから、例えばある染色体が極体中で1本多ければ、卵子側では1本少ない、というように推測できるのです。

これまでの論文等では受精後の第2極体を調べてPGT-A(胚の染色体スクリーニング)として使用する目的のものが多く、第1極体を用いて卵子に関して検討したものは少ないように思います。
が、胚の染色体異常の多くが卵子の第1減数分裂によるものだということを考えると、卵子の極体生検は、極めて有用だと思われます。

今後の研究と技術の進歩により、卵子の極体生検はより精度を高め、費用対効果を改善することによって、とくに卵子凍結等の効率が高まると思われます。


【参考文献】