【研究紹介】亜鉛不足が不育症の原因に？――麻布大学の最新研究から見える妊娠のヒント

妊娠を望む多くの方にとって、「受精卵はできたのに、なぜか妊娠が成立しない」という悩みはとても深刻なものです。受精卵が子宮内膜にうまく着床しない「着床不全」は、これまで原因不明とされてきました。

しかし今回、麻布大学の研究グループが行ったマウス実験によって、「亜鉛不足」がこの着床不全の一因となる可能性が示され、大きな注目を集めています。

妊娠のはじまりは、受精卵が分裂して胚盤胞となり、子宮内膜に潜り込む「着床」から始まります。研究チームは、子宮内膜に亜鉛を運ぶ役割をもつZIP10という遺伝子に注目し、これが働かないマウスでは、受精卵が子宮内膜にうまく入り込めず、妊娠が成立しないことを明らかにしました。

また、ZIP10が働かないと、妊娠の維持に必要なホルモンプロゲステロンの作用も弱くなることが判明。ヒトの細胞を使った実験でも同様の結果が得られており、これはヒトの着床不全にも当てはまる可能性があるとしています。

現代の日本人は、食生活の偏りやストレスなどで慢性的な亜鉛不足に陥っていると言われています。厚生労働省によると、1日の亜鉛の推奨摂取量は男性で11mg、女性で8mgですが、この量を満たすのは意外と難しいことが多いのです。

研究を率いた伊藤教授は、「サプリメントなどで適切に亜鉛を摂取することで、体外受精の妊娠率を高める可能性もある」と語っています。体外受精の繰り返しに疲弊しているご夫婦にとって、これは実用的で、すぐにでも取り組める予防策の一つかもしれません。

「妊娠に必要なのは技術だけではない」。日々の栄養、生活習慣、そして心のゆとりも大切です。今回の研究は、まさにそのことを教えてくれています。

妊活中の方も、これから考えている方も、「自分の体の状態を知る」ことから始めてみませんか？もし気になることがあれば、ぜひ私たちオーク会のスタッフにご相談ください。

当院では、反復着床不全に対して、亜鉛濃度の採血を行い、必要ならサプリメント服用の提案を行っています。