医局カンファレンスです。
前回、着床不全の診療の難しさについて話しました(昨年12月29日の項をご参照ください)。
まだまだその一部ではありますが、診断・治療の可能性が見えてきましたので、取り上げていきたいと思います。
そのひとつが、子宮内膜ポリープです。
子宮内膜ポリープは子宮の内側にできる良性腫瘍です。不正出血の原因になることもありますが、かなり多くの方が無症状です。最近、不妊症患者さんの10-20%が子宮内膜ポリープを持っていて、これを取り除くことで妊娠率が上向くという報告がなされました。
また子宮内膜ポリープの一部、特に不正出血をともなうものと閉経後のものは、子宮体癌発症と関係していることも徐々に分かってきて、不妊症とは別の意味でも注意が必要です。
子宮内膜ポリープは、通常の超音波検査や子宮卵管造影を用いて、その存在を推測できる場合もありますが、さらに診断に役立つ検査がソノヒステログラム、MRI、そして子宮鏡です。
ソノヒステログラムは、子宮の中に生理食塩水を注入しながら超音波で観察する検査で、子宮の内側の形状を見るのに優れています。麻酔なしで、外来で短時間でできます。
MRIは核磁気を使った画像診断で、ポリープと子宮筋腫を見分けるのに有効です。撮影の際は専門施設をご紹介しています。
子宮鏡はいわば胃カメラの子宮版です。内視鏡で子宮内膜をじかに観察することによって、ポリープの位置、大きさ、数をかなり正確に把握できます。他の検査ではわからないマイクロポリープも見つけることができます。また麻酔を使えば、ポリープを取り除く手術をおこなうことも同時に可能です。
子宮鏡検査・手術は体への負担の少ない検査・治療で、お腹を開ける必要はありません。ポリープ以外にもさまざまな情報を手に入れることもできて、子宮の中の状態を評価するのに威力を発揮します。
当院ではソノヒステログラム、MRI、子宮鏡検査・手術を用いて、子宮内膜ポリープの診断・治療を積極的に行っています。いずれの検査・手術も保険適応が可能です。
体外受精・胚移植がなかなかうまくいかずに悩まれている方は、是非一度ご相談ください。