慢性子宮内膜炎…その1

慢性子宮内膜炎…その1

医局カンファレンスです。

前回2月7日の「子宮内膜生検・組織診」のブログの最後に触れた着床不全に関わる可能性のある「慢性子宮内膜炎」が今日のテーマです。

慢性子宮内膜炎は子宮内膜に‘形質細胞’というリンパ球が侵入してくる炎症状態です。形質細胞は抗体(免疫グロブリン)という蛋白を作る能力が高い細胞です。
子宮内膜に形質細胞が見られることは通常ありません。

子宮内膜は、機能的に見ると「月経の際に剥がれる部分」と「剥がれない部分」に分けることができます。
子宮内膜の「剥がれない部分」に炎症が継続することで、“慢性”化するのではないか、とする説がありますが、はっきりわかっていないことも多いのが現状です。

慢性子宮内膜炎は

  1. 診断には子宮内膜生検という組織をかたまりで取る処置が必要なこと
  2. 従来の病理組織検査の手法では、形質細胞を見逃しやすいこと
  3. 症状がおおむね軽く、無症状のことも多い良性の病気であること

などから、これまで産婦人科医や病理医から問題視されることが少なかったものです。

しかし最近になって、不妊症との関連がにわかにクローズアップされてきました。

米国やわれわれの調査では、反復着床不全の患者さんの30%、原因不明不妊症の28%、原因不明習慣流産の12%に慢性子宮内膜炎が見られました。
まだ小規模なスタディではありますが、抗生剤を使った治療により、慢性子宮内膜炎の患者さんの子宮内膜から高い確率で形質細胞が消え、それにともなって妊娠率が改善したことも報告されました。