子宮内膜症と不妊

子宮内膜症と不妊

医局カンファレンスです。

今回は『子宮内膜症と不妊』について少しお話させていただきます。

子宮内膜症は生殖期女性の約7%に認められ近年の晩婚化や少子化に伴い、増加傾向にあり社会的関心も高く、不妊との関係については以前から言われています。

また不妊女性の30-40%に合併するとも言われています。そして体外受精を行った子宮内膜症患者の卵のクオリティ、着床率および受精率の低下が報告されています。

しかし、具体的に何がそのような原因を作りだしているのかはわかっていません。

そこでいろいろな研究が進んでいますが、私は卵の発育に関係しているエストロゲンとプロゲステロンの受容体(ホルモンが作用するためのもの)の発現を顆粒膜細胞(卵子を囲んでいる細胞)において研究していました。結果、子宮内膜症でない患者の顆粒膜細胞ではそれぞれの受容体の遺伝子発現の比率が一定であるのに対し、子宮内膜症ではバラバラなのです。
すなわち、そのことが卵の発育異常がもたらされている可能性の一つではないかということです。

最近の発表でも内膜症患者の血液などで、内膜症でないかたと比較しサイトカインの発現にばらつきがあるという報告があり、やはりそのアンバランスさが不妊につながっているのではないかとも言われています。

ではどうすればいいか?

チョコレート嚢胞を合併した不妊患者への対応に、いまだ統一された見解はありません。
内膜症病変を摘出することが病気を治す方法としてすぐに思いつかれるかもしれませんが、そのことで卵巣にダメージが加わり、卵巣機能が低下し、さらに妊娠しにくくなる可能性があるのです。
挙児希望の方にとっては手術してよくなると思っていても、今度は卵が育たないとことになり、なんのために手術したのかということになりかねません。
年齢やチョコレート嚢胞の大きさ、内膜症の程度によって、手術を優先するのか、不妊治療を優先するのかを考えていかなければならないのです。

長々となりましたが、もし子宮内膜症と診断され、子供がなかなかできないという方、是非ご相談ください。その方に適した治療方法を考えていきたいと思っております。