医局カンファレンスです。
敬遠したくなるような見出しですが、大変興味深い内容なので、2回に分けて、米国から報告された臨床研究、その名もThe BEST (Blastocyst Euploid Selective Transfer) trialの成績を紹介します
(Forman EJ et al. Fertil Steril 2013; 100: 100―107)。
いかにもアメリカ人らしく自信満々の頭字語を冠しています。
体外受精で2個以上の拡張度3以上(注*)の胚盤胞が得られた、女性年齢43歳未満、卵巣予備能(血清AMH値と月経周期第3日目FSH値)良好な、IVFを受けるカップルでを対象に、
(グループA) | 2個を新鮮移植した |
(グループB) | 着床前診断として染色体スクリーニングを行い、 異常なしと判定された1個を新鮮移植した |
場合の妊娠成績、多胎妊娠率を、無作為に振り分けて比べたものです。
年齢、体重、不妊原因、AMH値、月経周期第3日目FSH値、E2値、HMG投与総量、採卵数、受精率、形態良好な胚盤胞の獲得率など患者の背景は両グループで差はありませんでした。
グループAは従来の新鮮胚盤胞2個移植です。現在、もっとも高い妊娠率が期待できる方法ですが、染色体の情報については当然不明です。形態良好であっても、胚盤胞の約50%にはなんらかの染色体異常があります。
2個あれば、少なくともどちらかの胚盤胞が染色体正常である確率は
1-(0.5´0.5)=0.75です。
すべての過程がうまく進むとすれば、妊娠率は約75%と期待されます。
この研究では、24週を超えて継続した妊娠が65%で非常に良い成績でした。
一方で、胚盤胞2個移植のマイナス面である多胎妊娠は、なんと約半数の48%に起こりました。
これに対してグループBでは、染色体異常のない胚盤胞を選んで1個移植しています。胚盤胞に対する生検の安全性・有効性と、1個移植による多胎予防効果を同時に見るのが狙いです。結果は24週継続妊娠率61%でグループAと同等、多胎妊娠は0%でした。
著者の結論は、生検によって染色体正常な胚盤胞を選別でき、妊娠率を下げることなく、なおかつ多胎を回避できるということです。