新しい卵巣刺激方法について

新しい卵巣刺激方法について

医局カンファレンスです。

今回は新しい卵巣刺激方法について紹介します。
(Fertil Sterili 2014;101:1308-1314)

卵巣反応不良の患者に対して、前周期にエストロゲン製剤を投与し、月経開始とほぼ同時にアンタゴニストのみを開始(月経2日目から9日目まで)、その後一旦中止しHMG注射をスタートさせ最大卵胞径が12mmになればアンタゴニストを再度スタートさせる方法です。(これを遅延スタート法とします)

比較した刺激方法は、従来の卵巣反応不良患者におこなっていた、前周期にエストロゲン製剤を使用し、月経開始2日目よりHMG注射を開始、最大卵胞径が12mmになればアンタゴニストをスタートさせる方法です。(これを従来法とします)

従来法で妊娠に至らなかった30名に対して遅延スタート法を試しました。

結果は、従来法での13mm以上の卵胞発育が3個以上だった患者は11名/30名に対し、遅延スタート法では21名/30名と有意に上昇していました。また、遅延スタート法の方が刺激日数が有意に少なく成熟卵数や移植可能胚が有意に多くなっていました。

(解説)
卵巣反応不良の患者では、FSHが上昇しているため、前周期の黄体期から反応して大きく成長してくる卵胞があり、あとに続く卵子の成長を妨げるといわれています。

最近では、黄体期にエストロゲン製剤を投与することでFSHが抑えられ、均一な卵胞の成長が見られることが報告されています。
それだけでなく、卵胞前期も内因性のFSHを抑制することでより一時的に卵胞発育を抑え、レセプターの数を均一にし、それによりHMG注射に対する反応が均一となり、そろった大きさの卵胞の成長がみられるのではとの仮説に基づいて行われました。
結果として、発育卵胞数の増加や妊娠例も出ています。

しかしこの論文ではまだ症例数が少なく、この方法はコストもかかります。
(アンタゴニストが高価。コスト面はわかりませんが、最近アンタゴニストの内服薬も承認がおりたようで今後に期待大です。)
今後は前向きにランダム化比較試験が早くに行われることを期待します。