胚移植のガイドライン

胚移植のガイドライン

医局カンファレンスです。

ASRM(American Society for Reproductive Medicine)から胚移植のガイドラインが出ていました(Fertil Steril 2017;107:882-96)。貴重な胚を移植するとき、どのようなことに注意をはらって行っていけばよいかについて再度確認するものでした。

まず、明らかに証明されていることは、
① 経腹超音波で確認しながら移植を行うことがよい
② やわらかいチューブで移植することがよい
③ 移植後のベッド上での安静は必要ない、
という3点でした。

また、これは効果があると十分には言えないが、可能性があると言えることは、
① 針治療は妊娠率を上げない
② TEAS(経皮的電気ツボ刺激法)に関するRCT研究があるがその有用性はまだわからない
③ 移植前後の抗生剤投与が妊娠率を改善することはまだわからない
④ パウダー入りの手袋が妊娠率に影響を与えないとしたRCT研究が1つあるが、はっきりとは言い切れない
⑤ 移植の時に、頸管粘液を除去することで妊娠率と生産率を向上させる
⑥ 移植のカテーテルの位置を子宮底部から1cm以上手前の中央部分におくとよい
⑦ 移植後は速やかにチューブを抜去することがよい
⑧ 移植後のチューブ先端に頸管粘液がついていても、事前に除去できておれば妊娠率の低下にはつながらない
⑨ カテーテルに胚が残っていてもすぐに2回目の移植をすれば着床率、妊娠率、流産率に影響しない
、とのことでした。

根拠が不十分だったことは、
① 胚移植の際の麻酔、鎮痛剤は推奨されない
② マッサージは推奨されない
③ 漢方は推奨されない
④ 胚移植後のカテーテルの先端に血液が付着していることで着床率、妊娠率に影響しない
⑤ 移植の際に推奨される注入スピードはないということでした。

まとめてみると、
1 経腹超音波下で移植する。
2 やわらかいチューブで移植する。
3 頸管粘液をよく除去する。
4 子宮底より1cm以上手前に移植する
5 胚を注入後は速やかにチューブを抜去する。
6 移植後のベッド上安静は必要でない。

これらのことは私たちがいつも移植時に行っていることではあります。
しかし、このようにしっかりと証明されたことで、さらに自信をもって移植に取り組んでいけると思いました。