医局カンファレンスです。
妊娠前の血中ビタミンD濃度と妊娠についての論文を紹介します。
(Human Reprod 2019;11:2163-2172)
前方視的検討です。
30歳から44歳までの522名について検討しています。不妊治療歴あり、PCOS、子宮内膜症、パートナーが男性不妊歴あり、授乳中は除外しています。妊娠するまでもしくは12か月間、日々の性交渉や月経(出血)、妊娠反応の結果、サプリメントの有無、喫煙、アルコール、カフェイン、運動などの記録をしてもらい検討しています。
平均年齢33歳、ビタミンD血中濃度は36ng/mlでした。ビタミンD血中濃度が10ng/ml上昇すれば妊娠率は10%上昇する結果になっていました。
また、ビタミンD血中濃度が30-40ng/mlと比較して20ng/ml未満では妊娠率が0.55倍、50ng/ml以上では妊娠率は1.35倍となっていました。さらに、ビタミンD血中濃度が20ng/ml未満、30-40ng/ml、50ng/ml以上の妊娠までの期間が6か月以上かかった割合はそれぞれ51%、28%、15%でした。
(解説)
ビタミンDはカルシウムの吸収や骨の構築に必要なことは有名ですが、最近では妊孕性における役割について注目されています。マウスの実験ではビタミンD受容体欠損や酵素を作るための遺伝子発現を抑制すると、卵胞発育が抑制されたり子宮が小さくなり妊娠しにくい状態になることがわかっています。
また、ヒトでもビタミンDが高いと体外受精の成功率が高かったり、また月経不順やPCOSの排卵障害が改善することが報告されています。
今回の結果としてはビタミンD血中濃度が高いほど妊娠率が高い(早く妊娠する)ことがわかりました。
いろいろな報告があり、関係を否定する論文もありますが、ビタミンDが妊娠にプラスになっている可能性は高く、サプリを飲んだりビタミンDの多い食べ物を意識して摂取してもらうことは少しでも早い妊娠に向けてプラスになると思います。
当院で採血してみるとほとんどの方が30ng/ml未満です。欧米に比べて積極的にサプリを摂取することが少ないせいかとも思います。紫外線を浴びることでもビタミンDは体内で生成されますが、女性にとってシミ、しわの原因になるので積極的にはお勧めしません。サプリでしっかり補っていくことが大切だと思います。