医局カンファレンスです。
子宮内膜症の患者さんで、重症子宮内膜症(チョコレート嚢胞をもっておられる方や骨盤内に強固な癒着がみられる方)に不妊の方が多いと思われていましたが、最近では、ほとんど症状のない軽症子宮内膜症(腹腔鏡等で腹腔内をみてみないとわからない程度の方)でも、不妊の原因となってしまうという趣旨の論文が散見されます。
今回2014年Vol.29 Human reproductionで、ヒトの軽症子宮内膜症の卵胞液(軽症内膜症群)を使用して、牛の未熟卵を成熟卵に培養させることを内膜症の無いヒトの卵胞液(コントロール群)と比較して発表されていたので紹介したいと思います。
この論文では、軽症子宮内膜症の卵胞液を混入させたほうが、内膜症の無い卵胞液を混入させたものよりも、成熟卵になる率が有意に低い結果でした。卵胞液の入れる量も4段階に調節して、少ないものから多いものに分けて実験しており、軽症子宮内膜症群とコントロール群それぞれで濃度によっての有意差はありませんでした。
これは、すこしでも、子宮内膜症患者の卵胞液を使用すると、卵の成熟が阻害されるということを意味しています。
以上のことからも、たとえ症状の乏しい軽症子宮内膜症であれ、卵の成熟が阻害され、不妊の原因となりうる可能性が示された結果となりました。
軽症の子宮内膜症の患者さんは、症状として軽い月経痛があるかもしれませんが、大多数の場合は不妊原因が見つからず検査目的で腹腔鏡手術をうけられたときに見つかるケースが多いと思われます。
よって、これといって不妊原因がなく、月経痛は多少認めるといった患者さんは、原因検索を目的とした腹腔鏡の手術を受けられてもいいかもしれません。