医局カンファレンスです。
体外受精での妊娠において、胎嚢の大きさ(mGSD)と胎芽の頭臀長(CRL)の差で初期流産を予測できるかもしれないという論文が出ていたので紹介します。(Fertility and Sterility Vol.109,No1,Jan 2018)
2005年から2014年までのIVF 1243周期で胚移殖を行い、妊娠6週3日から妊娠8週までの経腟超音波でmGSD、CRLを測定し、mGSD-CRLと初期流産率、出生時体重、出産週数、その他の妊娠による合併症について検討しています。(単胎のみで検討)
mGSD-CRLを①<5mm、②5-9.99mm、③10-14.99mm、④≧15mmとしました。
流産率はそれぞれ①43.7%②15.8%③9.9%④7.1%でした。
その結果、①は②③④と比較し有意に流産率が高くなっていました。
ただ、出生時体重、出産週数、その他の妊娠による合併症との相関はありませんでした。
また、mGSD-CRLが大きいほど初期妊娠率が低くなる反比例の関係がみられました。
〈解説〉
IVFによる妊娠では、妊娠5週で子宮内に胎嚢があるかどうかを確認し、毎週発育をみています。
妊娠6週から7週にかけて胎芽がみえ心拍が確認されます。
その後、徐々に胎芽が大きくなってくるのですが、時折胎嚢の大きさに比べ胎芽が大きく感じられたり、反対に小さく感じられたりとさまざまです。
胎芽が大きくならないときは、初期流産の可能性があるなと感じるのですが、胎芽が育ってきている割に胎嚢が小さく感じるときがあります。
その場合、初期に流産されたり、問題なく継続されたりとさまざまです。今回、胎芽が大きくなっているにもかかわらず、胎嚢が大きくならないと初期に流産する確率が高くなることがわかりました。
過去には、CRLが小さいと胎児の発育が悪い、mGSD、CRLの両方小さいと初期流産する確率が高くなる、胎嚢が小さいと3倍体や16トリソミーと関係があるという報告があります。
また、今回と同じ検討では(自然妊娠に対してですが)、mGSD-CRL<5mmの流産率が94%と今回の結果よりはるかに高くなっていました。(ただしこの論文は昔のもので超音波の性能が現在とは大きく異なること、サンプル数が16と少ないことが背景にあります。)
〈まとめ〉
mGSD-CRLと初期流産には反比例の関係にあることがわかりました。
この結果は、以前の報告と同様にmGSD-CRL<5mmの初期流産率が高いことと一致しています。
しかし、mGSD-CRL<5mmであっても順調に成長すれば、妊娠中期以降の妊娠合併症が増加していくことと関係ありませんでした。また、mGSD-CRLだけで判断できるわけでなく、mGSD、CRLの各々がそれぞれ、初期流産の可能性についての予測にかかわってくると締めくくられていました。