医局カンファレンスです。
体外受精において、未熟卵がとれることはよくあります。
その場合、体外培養していくこともありますが、受精および分割がすすむことが難しい場合が多いです。
できれば、成熟卵が取れるようにしていくことがよいと考えています。いろいろな工夫がありますが、その一つにトリガー投与から採卵までの時間を延長することで成熟卵がとれるようになると言われています。
その論文を紹介したいと思います。
2014年にFertility and Sterilityで発表された後向き研究です。(2014;102;419-23)刺激方法はロング法、ショート法、アンタゴニスト法です。トリガーはHCGですが、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)の可能性のある人はGnRHアゴニストを使用しています。
トリガーから採卵までの時間で4グループにわけて検討しています。
グループ1(33.45h~34.44h)、グループ2(34.45h~35.44h)、グループ3(35.45h~36.44h)、グループ4(36.45hから38.25h)という時間で分けて検討しています。
患者背景や刺激方法での4群での差はありませんでした。
採卵1回につき成熟卵が取れた個数ですが、グループ1とグループ4間で、有意にグループ4が多い結果となっていました。また、成熟卵が取れる確率ですが、グループ1とグループ2間で有意にグループ2が高い結果でした。
さらに、成熟卵が1回の採卵で70%以上取れる確率もグループ1とグループ2間でグループ2が有意に高い結果になっていました。
もう一つは2015年の同じ雑誌のコホート研究です。(2015;103;72-5)
38歳未満で少なくとも3個は採卵でき、3回以上採卵をしている患者を対象としました。
トリガーから採卵までの時間を①34~36時間と②36~38時間でわけて検討しています。
また、排卵抑制をGnRHアゴニスト使用かGnRHアンタゴニスト使用でも比較検討もしています。
患者背景、採卵回数、刺激法、採卵個数に2群間で有意な差はありませんでした。アゴニスト使用での受精率と妊娠率は②のほうが有意に高く、全体としての妊娠率も②が有意に高い結果となっていました。
成熟卵の割合については有意差はありませんでした。また有意差はありませんが、良好胚や凍結胚の個数も②の方が多い傾向になっていました。
(まとめ)
2つの論文から、トリガーから採卵までの時間がはやいと成熟卵が取れる確率が減る(できれば35時間以上)、GnRHアゴニスト使用例ではトリガーから採卵までの時間が36時間以上の方がよりいいかもしれないという事です。GnRHアゴニストは下垂体機能の抑制がかかりすぎることにより、卵が成熟するまでに時間がかかることが考えられます。
未熟卵が多い方(特にGnRHアゴニスト使用)、採卵を3回以上していても妊娠にいたらない方は受精率を上げる結果もでていることから、採卵からトリガーまでの時間を延ばしてみることもよい結果につながるかもしれません。